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「生活費の危機」のなか、優先された経営者たちの報酬アップ...庶民との格差は79倍→118倍に拡大(英)
Sergio Rojo/Shutterstock
<英調査によれば大企業100社のCEO報酬は、21年の6億3000万円から22年には7億3000万円に16%増加。労働者の年収615万円の118倍に達した>
[ロンドン発]ロンドン証券取引所に上場する時価総額が大きい100社(FTSE100)の最高経営責任者(CEO)の報酬(中央値)が2021年の338万ポンド(約6億3000万円)から昨年391万ポンド(約7億3000万円)に16%も増加していたことが英独立系超党派シンクタンク「ハイ・ペイ・センター」の調べで分かった。
英国企業トップの報酬はフルタイム労働者の年収3万3000ポンド(約615万円)の118倍。20年の79倍、21年の108倍に比べて格差は拡大し、18年の123倍以来、最高水準に達した(いずれも中央値で比較)。庶民が「生活費の危機」に苦しむ中、裕福な経営陣の報酬アップを優先する仕組みは「100%間違っている」(ハイ・ペイ・センター)という。
平均報酬も444万ポンド(約8億2600万円)と21年の423万ポンド(約7億8700万円)を上回った。FTSE100企業の96%がCEOにボーナスを支給しており、21年の87%より増えた。しかしボーナスの平均支給額では140万7000ポンド(約2億6200万円)と21年の143万1000ポンド(約2億6600万円)を下回った。
CEO報酬のトップ10企業は次の通りだ。
・アストラゼネカ(製薬)1532万ポンド(約28億5100万円)
・BAEシステムズ(航空・防衛)1069万ポンド(約19億9000万円)
・CRH(建設資材メーカー)1038万ポンド(約19億3200万円)
・BP(エネルギー)1003万ポンド(約18億6700万円)
・エクスペリアン(データ・分析ツール)994万ポンド(約18億5000万円)
・シェル(エネルギー)970万ポンド(約18億500万円)
・ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(タバコ製造・販売)962万ポンド(約17億9000万円)
・アングロ・アメリカン(鉱業資源)954万ポンド(約17億7500万円)
・エンデバー・マイニング(金鉱山)899万ポンド(約16億7300万円)
・GSK(製薬)845万ポンド(約15億7300万円)
インフレ、住宅ローン、食品高騰に苦しむ庶民
アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、エヌビディアといったテクノロジー企業が時価総額トップ5を占める米国と違って、英国は資源、エネルギー、防衛など大英帝国の香りを漂わせる「ダイナソー企業」がズラリと並ぶ。米国市場への上場を目指す企業が相次ぐロンドン証券取引所は「ジュラシック・パーク」とも揶揄される。
アストラゼネカはオックスフォード大学と協力して新型コロナウイルスに対するワクチンを製造した。しかし、このワクチン接種で血栓のできる割合は40代で10万分の1だが、30代では6万分の1に増える。このため今年に入ってワクチン誘発性の血小板減少症を伴う血栓症と診断された75人の患者や家族がアストラゼネカに対し訴訟を起こしている。