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「生活費の危機」のなか、優先された経営者たちの報酬アップ...庶民との格差は79倍→118倍に拡大(英)
アストラゼネカのパスカル・ソリオCEOの報酬1532万ポンドは一般労働者の年収の464倍。英国最大の防衛企業であるBAEシステムズはロシアのウクライナ侵攻により国防費が増え続けていることから、昨年に続き今年も売上高がさらに拡大する見通しだ。エネルギー・資源企業の業績が好調なのもCEOの手腕とはあまり関係がないと言っても差し支えあるまい。
英国家統計局(ONS)によると、今年4~6月のボーナスを除く賃金の年間伸び率は比較可能な01年以来最も高い7.8%を記録。しかし住宅関連コストを含む消費者物価指数(CPIH)は6.4%と依然として高く、多くの世帯が住宅ローン金利の上昇(7.68%増)、住宅賃貸料(5%増)や食品・飲料費(14.9%増)の高騰に苦しんでいる。
企業の取締役会に労働者を加えよ
英国の労働組合会議(TUC)のポール・ノワック書記長は「何百万もの家庭が生活費の危機で家計がズタズタになっている一方で、金融街シティの役員は大幅な報酬アップを享受している。企業に必要な常識と自制心を注入するために、取締役会の席を労働者に与えなければならない」と憤る。
人材確保のため、FTSE100企業の74%がストックオプションプランなど株式報酬による長期インセンティブ(LTI)を支払っており、21年の71%から増加。LTI平均支給額は21年の149万6000ポンド(約2億7800万円)から179万1000ポンド(約3億3300万円)に増えた。HSBC、ロイズ、ナットウェストなど金融セクターの多くの企業がLTIを導入している。
ノワック書記長は「トップ層だけでなく、すべての人々により良い生活水準をもたらす経済が必要だ。しかし、保守党政権下の英国はグロテスクな『極端主義』の国になってしまった。国中の世帯が食卓に食べ物を並べるのに苦労している一方で、ドイツ製高級車ポルシェの売れ行きは記録的な水準に達している」と指摘する。
「ハイ・ペイ・センター」は格差解消のため、(1)役員報酬を決定する委員会に最低2人の労働者代表を含めることを企業に義務付ける(2)労働組合加入と団体交渉のメリットを労働者に伝えるため、組合の職場への立ち入りを保証する(3)組合と使用者が部門を超えて交渉するための新たな機関を設立する――ことを求めている。
全従業員に共通のプロフィットシェア(利益配分)の導入を
企業は役員以外の高額所得者や下請け労働者を含む低額所得者の報酬についてより詳細な情報を開示し、個々の企業の賃金交渉や賃金格差についてオープンに議論することや、長期インセンティブ(LTI)制度を段階的に廃止し、その代わり全従業員に共通のプロフィットシェア(利益配分)のような仕組みを導入することも提案している。