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プリゴジン反乱で「ロシア軍の戦闘力」はどこまで低下する? 兵力的な悪影響だけでない、問題の深刻さ
エフゲニー・プリゴジン(2023年4月) Yulia Morozova-Reuters
<兵員と装備の供給が減少するという「物理的な側面」は、今回の反乱がもたらしたロシア軍の戦闘力低下という問題の一端でしかない>
「24時間以内に収束した『プリゴジンの反乱』はロシア全土に波紋を広げ続けている」。イラク、アフガニスタンに従軍し、米統合参謀本部の戦略官も務めたミック・ライアン元オーストラリア陸軍少将はツイッターでこう指摘する。「プリゴジンの反乱はロシアの国家機関の脆弱さを浮き彫りにした」
ウラジーミル・プーチンはロシア大統領に留まる可能性が強いものの、国防省や軍、情報機関、内務省、治安組織の国粋主義者(シロビキ)でつくるプーチンの権力基盤に大きな亀裂が入った。プーチンは来年3月の大統領選で勝利して事実上の終身大統領への道筋を確実にすることを目指しているが、「プーチン大統領」がいつまで続くか誰にも分からなくなった。
「プーチンの料理番」ことロシアの民間軍事会社ワグネルグループ創設者エフゲニー・プリゴジンはアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の介入でベラルーシに逃れた。傭兵部隊を率いるプリゴジンの次なる資金稼ぎの舞台がベラルーシなのか、膨大な資源が眠るアフリカなのか、それとも他の場所なのか、明らかになるまでしばらく待つ必要がある。
プーチンは、無能だが忠実なセルゲイ・ショイグ国防相を選び、夥しい血を流した東部ドネツク州バフムートの戦闘で正気を失うまでに過激になったプリゴジンを最終的に切り捨てた。反乱を黙認した疑いがある「ハルマゲドン将軍」ことセルゲイ・スロビキン・ウクライナ駐留ロシア軍副司令官はロシア当局に拘束されたとされる。
ショイグとゲラシモフが解任される可能性は低い
多くの軍や治安組織がプリゴジンの「正義の進軍」を止めなかったことはロシアが脆弱な国家となり、プーチンの統治に深い不満を抱いていることを浮き彫りにしている。クレムリンの内部抗争は6月4日に始まったウクライナ軍の反攻をかすませた。しかし、ライアン氏は「プリゴジンの反乱はロシア軍の戦闘力に重要な影響を与える可能性がある」と分析する。
戦闘力は軍事組織の知的・物理的・道徳的な側面からなる。「戦闘で使用される大量の兵員と装備を供給する物理的側面ではプリゴジンの反乱は東部ドンバスにおけるロシア軍の精鋭部隊を減じることになる。ワグネルが人海戦術をとり、精鋭部隊を狡猾に使っていなければ、ロシア軍がバフムートを掌握できていなかっただろう」(ライアン氏)