コラム

英政府の密航者対策は「ナチスと同じ」残酷さと、あのリネカーが大批判して議論沸騰

2023年03月08日(水)19時03分

英国の納税者は1日当たり10億円近くを負担

「18年以降、約8万5000人が小型ボートで英国に不法入国し、そのうち4万5000人が昨年の不法入国者だ。多くはアルバニアのような安全な国から来た。ほぼ全員がフランスを通過している。その大部分、21年時点で74%は40歳未満の成人男性で、犯罪組織に数千ポンドを支払えるほどお金を持っていた」(ブラバーマン内相)

密航者は到着後、大半は国内のホテルに収容され、英国の納税者は1日当たり約600万ポンド(約9億7600万円)を負担している。「国境管理に毅然とした態度を取ろうとする人を人種差別主義者だと非難するのは無責任だ」と強弁するブラバーマン内相だが、法案が欧州人権条約に基づく英国の義務に反している恐れが「50%以上」あることを認めている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR )のビッキー・テナント英国代表は「国際法に違反し、海峡横断を阻止するために必要な措置ではない」とBBCに語っている。欧州連合(EU)離脱によって英仏関係が極度に悪化し、フランス側が密航者を水際で阻止してくれなくなったのが不法入国者激増の最大の理由だ。

国境管理を強化すればフランス側に滞留する不法入国者が増えるだけに英仏の交渉は難航必至だ。自宅で難民を受け入れたこともあるリネカー氏は自分の信念を曲げてツイッターを封印されるぐらいならBBCを去ることを選択するかもしれない。これは次の総選挙をにらんだ保守党の政治パフォーマンスに過ぎないのだから。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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