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ロシアの「弱さ」思い知った旧ソ連諸国...「力の空白」で周辺地域が一気に不安定化
作戦はロシア軍がウクライナ北東部ハルキウから屈辱的な撤退を強いられた直後に実行された。ロシアは2国間防衛条約と集団安全保障条約(CSTO)に基づきアルメニア国内に基地を置いており、同国が第三国に攻撃された場合、集団防衛の義務を負っている。ロシアはアルメニアから支援要請があったものの仲裁できず、代わって外交を展開したのは米欧だった。
「2020年のナゴルノ・カラバフ紛争で圧倒的勝利を収めて以来、アルメニアに対しアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は交渉と武力を織り交ぜた『強圧外交』を行ってきた」と、欧州のシンクタンク、カーネギー・ヨーロッパのトーマス・デ・ワール上級研究員は同国幹部の言葉を紹介している。
安全保障の保証人としてロシアは見切りをつけられた
デ・ワール研究員によると、アリエフ大統領は(1)アルメニアがナゴルノ・カラバフの領有権を放棄する「平和条約」を締結させる(2)アルメニアとの国境をアゼルバイジャンの都合の良いよう画定する(3)アルメニア領土を横断する「ザンゲツール回廊」構想を実現する――という3つの目標を掲げていたという。本当に「和平」は可能なのか。
CSTOは今年1月、ロシア指揮下の部隊を「平和維持」のため加盟国カザフスタンに兵を送り、200人以上が死亡した危機「血の1月」を鎮めるのに貢献した。ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン6カ国でつくる「プーチン版NATO(北大西洋条約機構)」と呼ばれるCSTO初の集団的自衛権行使だった。
しかしウクライナ侵攻でプーチン氏に協力したのはCSTOの中ではベラルーシのみ。ロシア依存度が高いアルメニアは「地域安全保障の保証人」としてロシアに見切りをつけ、米欧に支援を求めている。したたかなアリエフ大統領はアルメニアだけでなく、その背後にいるロシアにも狙いを定め、大規模攻撃に踏み切ったとの見方も有力だ。
キルギスは9月、同じCSTO加盟国タジキスタンとの国境紛争がエスカレートし、約100人が死亡した。プーチン氏70歳の誕生日(10月7日)、サンクトペテルブルクで開かれた旧ソ連諸国の「独立国家共同体」(CIS)非公式会合に、キルギス大統領は突然欠席し、代わりに電話で祝辞を伝えた。プーチン氏がタジキスタン大統領に勲章を与えたためと言われる。