コラム

内憂外患のチャールズ英国王 ヘンリー&メーガンが年内に予定する「反乱」

2022年09月10日(土)13時26分
チャールズ新国王とカミラ王妃

バッキンガム宮殿前で国民に感謝の気持ちを伝えるチャールズ新国王とカミラ王妃(9月9日、筆者撮影)

<新国王となったチャールズ3世が直面するのは、難題だらけのイギリスと英王室の現状。敬愛された女王の足跡をたどることはできるか>

[ロンドン発]在位70年、96歳で逝去した母エリザベス英女王と別れを告げた新国王チャールズ3世(73)と妻カミラ王妃(75)は9日、英スコットランド・バルモラル城からロンドンのバッキンガム宮殿に戻り、弔花を手向ける数千人の国民に感謝の言葉をかけた。チャールズ国王はテレビ演説で「生涯の奉仕を皆さんに誓います」と宣言した。

午後6時(日本時間10日午前2時)、チャールズ国王は「海外で人生を歩むハリー(ヘンリー公爵の愛称)とメーガン(夫人)に私の愛を伝えたいと思います」「愛するママへ、パパのもとへと旅立つあなたにありがとうと言いたい。私たち家族とこの国の家族のために何年も尽くしてくれてありがとう。天使の飛行が汝を休息に導くでしょう」と話した。

エリザベス女王は第二次世界大戦後の1947年、21歳の誕生日にケープタウンからラジオ放送で「私たちの世代は一人前の男、女になろうとしています。戦争が残した不安や苦難にひるんではなりません。その長さにかかわらず、私の全生涯を国王への奉仕と私たち全員が属する偉大な王室への奉仕に捧げることを皆さんの前で宣言します」と誓った。

チャールズ国王は「これは彼女の全人生を決定づけた深い誓いだった」と振り返り、「彼女の奉仕の人生には、伝統への変わらぬ愛と進歩に対する恐れを知らぬ受容性があり、それが英国を偉大な国家にしていると思います。女王が揺るぎない献身を惜しまなかったように私も生涯を通じて忠誠と尊敬と愛を持って皆さんに仕えます」との約束を新たにした。

「ハリーとメーガンに私の愛を伝えたい」の真意

英国は欧州連合(EU)離脱を決めた2016年の国民投票から分断したままだ。スコットランドが独立し、北アイルランドは分離、アイルランドと統合する可能性すらくすぶる。デービッド・キャメロン、テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、リズ・トラスと6年余の間に保守党内で4人の首相が入れ替わった。英国だけでなく保守党内も二分している。

王室もヘンリー公爵とメーガン夫人の離脱をきっかけに目を覆うばかりの兄弟争いが繰り広げられる。「ハリーとメーガンに私の愛を伝えたい」というのは、メーガン夫人が最近、米雑誌カットのインタビューで「ヘンリー公爵は父を失った」と発言したことに対するチャールズ国王からの和解提案である。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、貿易戦争巡る懸念でも目標達成へ

ワールド

タイ証取、ミャンマー地震で午後の取引停止 31日に

ワールド

ロシア、ウクライナがスジャのガス施設を「事実上破壊

ビジネス

EU、今後5年で5000億ユーロの防衛支出可能=フ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 2
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 3
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 4
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」に…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    「完全に破壊した」ウクライナ軍参謀本部、戦闘機で…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「マンモスの毛」を持つマウスを見よ!絶滅種復活は…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 8
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 9
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 10
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story