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「何百万人に憎まれている」 ロシア国民と中国は、なぜゴルバチョフが嫌いなのか
「ゴルバチョフ氏は『私たちも同じだ。私たちの仕事は、私たちに共通する利害を特定することだ』とサッチャー氏に伝えた。ゴルバチョフ氏が冷戦の緊張を打開したいと切望しているのはパーマストンの引用からも明らかだった。対内的にはソ連経済の窮状を懸念していた」とハウ氏は振り返った。翌85年ゴルバチョフ氏はソ連指導者に選ばれた。
ジョー・バイデン米大統領は「彼はレーガン米大統領と協力して米ソ両国の核兵器を削減し、核軍拡競争の終結を祈る世界中の人々を安堵させた。グラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ、すなわち開放と再編を単なるスローガンとしてではなく、長年にわたり孤立と収奪を強いられてきたソ連の人々が進むべき道として信じた」とその功績を偲んだ。
「ゴルバチョフ氏は今でも何百万人ものロシア人に憎まれている」
米月刊誌アトランティックのトム・ニコルズ記者は「ゴルバチョフ氏の勇気と良識はソ連を救おうとしたことではなく、避けられないことを受け入れるという決断をしたことにある。すべてが失われた時、彼は自分の運命を受け入れた。この決断のために、彼は今でも何百万人ものロシア人に憎まれている」と記している。
英紙インディペンデントのパトリック・コックバーン記者は「ゴルバチョフ氏が予見していなかったのは、軍隊のように運営・組織され、自らのイデオロギーへの信仰によって権力の独占を正当化していたソ連共産党を、他者と権力を共有する社会民主主義政党に似たものに変えることはできないということであった」と指摘している。
ゴルバチョフ氏はソ連共産党指導者としての権力に依拠してペレストロイカを進めようとしたが、逆に党の権威を弱め、自分と改革派の存立基盤を揺るがすことになった。ソ連崩壊のプロセスをつぶさに検証した中国が一番恐れるのは、共産主義というイデオロギーを放棄した後に訪れた体制の崩壊である。
中国共産党系機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は「中国のロシアウォッチャーはゴルバチョフ氏を原則なしに米国と西側に迎合し、国際情勢の判断に重大な誤りを犯し、国内経済秩序に混乱をもたらした悲劇の人物とみなしている。他の国々に対して、西側のいかなる『平和的進化』の試みにも警戒するよう思い起こさせる警告となった」と強調する。