コラム

砲撃戦で逆転したウクライナ 「ブラック・ホーネット」で領土奪還の市街戦に前進か

2022年08月26日(金)20時45分
ジョンソンとゼレンスキー

キーウをサプライズ訪問したジョンソン英首相と、ウクライナのゼレンスキー大統領(8月24日) Gleb Garanich-Reuters

<ドローンの戦いになっているウクライナ戦争において、大きな効力を発揮すると期待される小型ドローン「ブラック・ホーネット」を英国とノルウェーが提供>

[ロンドン発]ボリス・ジョンソン英首相はロシアのウクライナ侵攻から半年、ウクライナの31回目の独立記念日に当たる8月24日、キーウをサプライズ訪問した。これで3回目のサプライズ訪問である。2000機の最先端ドローン(無人航空機)と徘徊型兵器を含む5400万ポンド(約87億2700万円)の追加軍事支援を約束した。

ジョンソン氏はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を前にこう強調した。

「わが国もウラジーミル・プーチン露大統領の戦争によって引き起こされたエネルギー高騰が原因でインフレと戦っている。プーチンの愚行と悪意で無謀にも引き起こされ、悪化した経済的困難を乗り越える強さと忍耐力がわが国にはある。プーチンが成功すれば、世界中の独裁者にゴーサインを出すことになり、国境は力ずくで変えられるという合図になる」

「これからの冬は厳しいものになる。プーチンはエネルギー供給を操作して欧州の家庭を苦しめようとしている。ウクライナの友人として最初の試練はその圧力に耐え、消費者を助け、同時に自国の供給を増強することだ。この冬を乗り切れば、私たちの立場は強化され、逆にプーチンの立場は週を追うごとに弱くなる」と西側にウクライナ支援の継続と団結を訴えた。

ジョンソン政権は対戦車ミサイル6900基、超軽量の携行式対戦車ミサイル(NLAW)5000基、装甲車120両、近距離防空ミサイル「スターストリーク」、対艦ミサイル、多連装ロケットシステム(MLRS)6両、ドローンなど欧州の中で金額ではポーランドに次いで多くの武器をウクライナに供給している。また最大1万人のウクライナ人新兵を同盟国と協力して訓練している真っ最中だ。

手のひらに乗るヘリコプター型ドローン

保身のためのウソを塗り重ねて自滅し、9月上旬に辞任するジョンソン氏だが、その直感力には驚嘆させられる。袋小路に陥った欧州連合(EU)離脱交渉を強行突破し、コロナ危機では世界に先駆けワクチンの予防接種を展開、今回のウクライナ戦争でもいち早くウクライナへの武器供与に踏み切り、ロシアが圧倒的に優勢とみられていた戦争の流れを変えた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story