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イギリスを襲った史上最強の「熱波」...社会・経済を押しつぶす「真のコスト」は?
「イギリスではこのような山火事を見たことがない」
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のトーマス・スミス准教授(環境地理学)は「イギリスでは、このような山火事を見たことがないと言ってもよいだろう。草むらや山林で発生した火災が都市部へ拡大し、建物の消失という前例のない事態になっている。記録的な高温に加え、相対湿度が非常に低く、しかも長い間雨が降っていなかった」と話す。
英エジンバラ大学のローリー・ハッデン上級講師(火災研究)は「地域社会の近くで火災が発生することは特に懸念される問題だ。世界の多くの地域(アメリカ、南欧、オーストラリア)では、住宅や建造物が植生と混在、または隣接している地域で火災が定期的に発生している」との懸念を示す。
英レディング大学のナイジェル・アーネル教授(気候変動科学)は「気候変動はイギリス全土で火災の危険性を高めており、私たちはそれに備える必要がある」と指摘する。オックスフォード大学スミス・スクール・オブ・エンタープライズ・アンド・エンバイロメントのラディカ・コスラ准教授は「これは異常なことではなく、新常態なのだ」と表情を引き締める。
「1986年から2005年に比べ、2019年には世界で4億7500万人余分に熱波に曝露(3日以上の猛暑を経験すること)されたことが観測された。イギリスがいま経験しているレベルの暑さは危険だ。イギリスの次のリーダーはネットゼロ目標に向けた揺るぎないコミットメントと同時に、緊急の適応が必要であることを理解しなければならない」