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サハリン2の権益を失うか...弱い立場の日本はウクライナ戦争「最大の敗者」に?
その日の早朝、中部クリヴィー・リフの取材を終え、寝台列車でキーウに戻った筆者はタクシーに飛び乗り、攻撃されたキーウ中心部の現場に向かった。近くにはロシア軍が過去何度か攻撃した旧軍施設があった。長距離の誘導ミサイルは大砲(射程40~50キロメートル)に比べ精度が高いことをうかがわせた。プーチン氏の脅しであることは明らかだった。
引き続き北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が28~30日、マドリードで開かれ、加盟申請したフィンランドとスウェーデンの手続き開始が決定された。難色を示していたトルコも支持に転じ、北欧2カ国のNATO加盟は大きく前進した。インド太平洋地域から日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがNATO首脳会議に初めて参加した。
ソフトターゲットの日本
「サハリン2」を巡るプーチン氏の大統領令はこのタイミングで発せられた。北方領土問題で長年にわたりロシアの顔色をうかがい、エネルギー自給率が11%と低い日本はプーチン氏から見ればソフトターゲットである。資源国オーストラリアのエネルギー自給率は346%、ニュージーランド74%。韓国は19%で日本より高い。日本を揺さぶっているのは明らかだ。
国内総生産(GDP)の257%にのぼる膨大な政府債務残高を抱え、円安が急激に進む日本はウクライナ戦争で「最大の敗者」になる恐れがある。米ブルームバーグによると、三菱商事は「サハリンエナジーに加え、パートナー企業や日本政府と連携して対応を協議中」とコメント。三井物産は「大統領令の内容について確認中だ」とだけコメントした。
三井物産と三菱商事はすでにサハリン2など純資産の減額をそれぞれ806億円、500億円と計上している(野村総合研究所)。岸田文雄首相は1日「大統領令に基づき契約内容としてどのようなものを求められるのか注視しなければならない。事業者ともしっかり意思疎通を図って対応を考えていく。すぐにLNGが止まるものではないと考えている」と語った。
サハリンエナジーの海外出資企業は、新会社でも現在と同じ比率の出資をできる。出資企業は新会社設立から1カ月以内にロシア政府に出資継続に同意する通知を行わなければならない。ロシア政府は3日間で出資継続を認めるか否かを決定する。ロシア政府が拒否した場合、4カ月以内にその企業の株式はロシア側に売却される。