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脚が吹き飛び、胸を撃たれた時の対処法は? ウクライナ「救護訓練」で見た国民の覚悟
ウクライナ兵に米軍の戦闘外傷救護の仕方を教えるマーク・ロペス氏(左、筆者撮影)
<元米兵が指導する戦闘外傷救護コースには、兵士や軍医のほか13歳の少年も参加。参加した筆者が見たウクライナ人たちの「危機意識」>
[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]ロシア軍の占領地域から約50キロメートルしか離れていないウクライナ中部クリヴィー・リフを訪れた。放射性物質の闇取引の取材で2015年にモルドバの首都キシナウで偶然知り合った元米陸軍兵士マーク・ロペス氏から「ウクライナ兵に戦闘外傷救護を指導しているので一度、見に来ないか」と誘われたからだった。
ポーランドの首都ワルシャワからウクライナ西部リビウまで長距離バスで9時間以上、リビウからウクライナの首都キーウまで寝台列車で一晩、キーウからクリヴィー・リフまで寝台列車でまた一晩という長い旅だった。途中、キーウで落ち合ったマークは50メートル先から「ハイ、マサト。こっちだよ」と大声で呼びかけてきた。
ロシア軍が撤退し、大砲の射程から外れたキーウは安全になったとは言え、戒厳令下の首都を歩く年配のアジア系カップルは珍しいので、すぐに分かったようだ。マークは通訳のアレクサンドルと、ディマという現地の若手助手2人を連れていた。マークはイラク、アフガニスタン戦争にも従軍したベテランで、今回は自ら志願して5月からウクライナ軍に加わった。
米陸軍での階級を確認すると「今はウクライナ軍の少佐だよ」とマークは屈託なく笑った。14年から4年間、現地でウクライナ軍に爆発物探知や戦闘外傷救護を指導した経験を持つだけに、ウクライナの地理から経済、政治、戦況すべてに精通している。筆者がウクライナ入りを決めたのもマークならどれぐらいのリスクがあるか的確に判断できると考えたからだ。
「アフガンの恩人がカリフォルニアに来られることに」
アレクサンドルが寝台列車の手配からスマホへの空襲警報アプリのダウンロードまで済ませてくれた。ロシア軍の占領地域に近いクリヴィー・リフではリビウやキーウ以上に空襲警報が鳴り響くが、「ロシア軍は長距離ミサイルをほぼ使い果たしているから、安心しろ」というマークの言葉通り、地元の人たちは普段の生活を取り戻そうと努めている。
クリヴィー・リフにある研究所で開かれた戦闘外傷救護の教室に参加した日、マークは「私の命の恩人であるアブドゥル・ハディが家族と一緒に、ついにカブールからカリフォルニアに来られることになったんだ」とうれしそうに話した。アフガンに従軍していた頃、マークを乗せた車は即席爆発装置(IED)の爆発に見舞われた。運転手は死亡した。