コラム

「勝利」どころか「戦争」も宣言しなかったプーチン...戦勝記念日に暴かれたロシア軍の実態

2022年05月10日(火)10時57分

「スホイ34のダッシュボードにGPS受信機が貼り付けられていた」

ロシアの戦争プロパガンダに詳しい英歴史家イアン・ガーナー氏は「この日の演説でプーチンはしばらく収まっていたウクライナが核兵器保有を目指しているという話を蒸し返した。プーチンが核戦争を開始する恐れがあるかと言えば、そうではない。純粋にレトリックとして核を再び持ち出しただけだ」と指摘する。

「演説の半分以上が過去ではなく現在の話になっている。彼が強調したのは戦争で死んだ人たちの家族に提供されている、あるいは提供されているとされる支援だった。彼は第二次大戦の退役軍人や軍人、ロシア正教会の聖職者に囲まれていた。国家、世俗的な権力、宗教的な権威と過去、現在、未来の結びつきのすべてが国民に示された」と言う。

この日、ウォレス英国防相は「ロシア兵の遺体を焼くために移動式火葬場が戦場を駆け巡っている。精鋭中の精鋭と言われるVDV第331親衛空挺連隊は一貫した作戦計画もなく、軽航空機動装甲車のみで行動したため、特に重い代償を払わされた。記念碑の壁にある女性が『誰も何も知らないまま、第331連隊は消えていく』と書き込んだ」ことを明かした。

「ベラルーシではロシア軍が侵攻1週間前に車の燃料を売ってしまったとの報告もある。指揮官の失敗による茶番劇でVDVや海兵隊のある部隊は最大で80%の死傷者を出したと伝えられる。墜落したロシア空軍の戦闘爆撃機Su(スホイ)34のダッシュボードにGPS(全地球測位システム)の受信機が貼り付けられていた」

ウォレス氏は無謀なプーチン氏の戦争を白日の下にさらしてみせた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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