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イギリスで「異例の歓迎」受けた岸田首相、「中露帝国」にどう立ち向かうか
アングロサクソン5カ国の電子スパイ同盟「ファイブアイズ」の中核をなす米英豪3カ国は昨年9月、オーストラリアの原子力潜水艦取得を米英が支援する安全保障協力の新たな枠組み「AUKUS」を抜き打ちで発表した。「AU(オーストラリア)」「UK(イギリス)」「US(アメリカ)」の頭文字を取り、人工知能(AI)や量子技術、サイバーでも協力する。
安倍晋三元首相が第1次政権下の2007年に提唱した日米豪印4カ国の「安全保障ダイヤモンド」は今や「QUAD(クアッド、4カ国の意)」と呼ばれるほど定着した。第4回日米豪印外相会合が今年2月、メルボルンで、第2回日米豪印首脳会合が昨年9月、ワシントンで開催され、日米豪印首脳テレビ会議がウクライナ情勢を協議するため今年3月に開かれた。
機能しない国連とG20
権威主義国家の中国やロシアが安全保障理事会の常任理事国として拒否権をふるう国連や、世界人口の約3分の2、世界経済の約80%を占める20カ国・地域(G20)は機能しないことがロシアのウクライナ侵攻で改めて浮き彫りになった。G7でもロシアの原油・天然ガスに依存する独仏と、ロシアとの対決姿勢を強める米英は一枚岩とはとても言えない。
インド太平洋に傾斜するジョンソン氏は4月に新型コロナ・パンデミックで延期されていたインドを訪れ、ナレンドラ・モディ首相と会談した。10月末までに自由貿易協定(FTA)交渉を大筋で終える目標を設け、国防・安全保障分野ではサイバー協力、宇宙、AIでの関与強化、最新戦闘機、ジェットエンジン先端コア技術の協力について話し合った。
ロシアから原油や武器を輸入するインドは米欧が制裁を強化したにもかかわらず、割引価格でロシア産原油の輸入を増やし、批判を浴びた。安保理や国連総会での対露非難決議も棄権した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と連日のように電話会談するジョンソン氏だが、現地でのモディ首相との共同記者会見ではウクライナ問題への言及を避けた。
中国やパキスタンと国境紛争を抱えるインドにはロシアを敵に回せない地政学上の理由がある。対パキスタンでインドは安保理におけるロシアの拒否権に頼るところが大きい。インドの兵器調達におけるロシアの存在感は低下しているものの、主要兵器はロシア製で、調達の約半分をロシアに依存する。そして中国はパキスタンとの関係を強化する。
英外相「グローバルNATO」体制を提唱
4月27日、リズ・トラス英外相は「地政学が戻ってきた」と題して「ウクライナでの戦争は私たちの戦争だ。ウクライナの勝利は私たちにとって戦略上不可欠。制裁でロシアは100年ぶりの対外債務不履行に直面している。ウラジーミル・プーチン露大統領が戦争資金を調達する場所をなくさなければならない。原油と天然ガスの輸入を断つことだ」と演説した。