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NATO加盟で腹をくくったフィンランド、マリン首相はこうして「鉄の女」になった
「自分の年齢や性別について考えたことはない」
パン屋で働き、高校時代はお小遣い稼ぎで雑誌を配達した。ソコスのレジ係として働いたのも家庭が貧しかったからだ。「平均的な生徒」(中学時代の教師)だったマリン氏は家族で初めて高校を卒業し、大学に進学した。タンペレ大学で行政学を学び、学士と修士を修了した。社会の役に立ちたいと政治に目覚めたマリン氏のサクセスストーリーが始まる。
プロサッカー選手と16年間交際し、20年に結婚。「フィンランドの行き届いた福祉、教育制度がなければ、私はキャリアで成功する機会を得ることはできなかった。同性愛家族で育ったので、平等と人権の両方を大切にしている」「自分の年齢や性別について考えたことはない。政治に関わるきっかけとなった社会問題に集中している」という。
マリン氏は、男女が平等に介護責任を負うことを奨励する政策、家庭内暴力の取り締まり、男女間の賃金格差是正、貧困層や移民の子供たちの教育改善策を盛り込んだ「平等プログラム」に取り組む。彼女のリベラルさに「この国が経験した中で最も左寄りの首相」と保守派から呼ばれたこともある。
首相就任時、マリン氏の娘は生後22カ月。授乳中の姿やパスタのレシピをインスタグラムにアップする「インスタ世代」だ。20年には雑誌の写真撮影で素肌にジャケットを着てポーズをとり、センセーションを巻き起こした。昨年は新型コロナウイルス感染者と濃厚接触したあとナイトクラブに出掛けて謝罪。検査の結果、自分は陰性だった。
日本を訪れたマリン氏は11日、2時間以上にわたって岸田文雄首相と会談、ワーキングディナーを行った。岸田氏は戦略的パートナーとして両国の関係をさらに強化したいと述べると、マリン氏は「ルールに基づく秩序を支持する両国の関係を一層強化していきたい」と応じた。国を守るのに右も左もない。果たして日本はマリン氏から学ぶことができたのだろうか。