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「私の主人はプーチンではなくルーブルだ」 プーチンと対立したロシア元石油王の闘争
Henry Nicholls-REUTERS
<ロシアで一番リッチな男と呼ばれたミハイル・ホドルコフスキー。現在はプーチンに背を向け、彼は「世界にとって終わりのない危険だ」と欧米に訴える>
[ロンドン発]ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が支配する帝国に反旗を翻し、10年の投獄を経て西側に逃れた元露石油大手ユコス(2006年に破産)社長ミハイル・ホドルコフスキー氏(58)と筆者は7年前に握手したことがある。かつてロシアで一番リッチな男と言われた元オリガルヒ(新興財閥)の手は思ったより大きく、分厚く、そして温もりがあった。
ボリス・ベレゾフスキー氏(故人)と同じくプーチン氏の政敵というだけなのか、それとも心からプーチン氏とは対極の自由なロシアを目指しているのか。ホドルコフスキー氏はいま「21世紀の欧州大陸で侵略戦争を始め、戦争犯罪にも関与する男がロシアのような国を支配するべきではない。プーチンは世界にとって終わりのない危険なのだ」と力説する。
4月5日、米シンクタンク、大西洋評議会のZOOM討論会で、ロンドンを拠点に活動するホドルコフスキー氏は、ウクライナ軍に武器や訓練を提供し、ロシアに前例のない規模の制裁を科しているのに、いまだにロシアと戦争していることを認めようとはしない米欧の指導者に不満を隠そうとはしなかった。
「プーチン氏は、これらは戦争だと断言し、核戦力を厳戒態勢に置いた。ウクライナが国を守るのを助けることが米欧にとってプーチン問題を解決する最終手段だ。ロシアはこれまでも資源を武器に使ってきた。これからも使うだろう。欧州はロシアの資源がなくても生存できる。米欧はウクライナの主権が回復されるまで制裁を解除しないことを決断すべきだ」
「醜い顔を鏡のせいにしても仕方がない」
プーチン氏は大統領就任後の2000年7月、21人のオリガルヒをクレムリンに集め、「あなた方は自分たちが支配する政治的な構造を通してこの政府を作り上げたことを忘れてはならない。醜い顔を鏡のせいにしても仕方がない。関係を完全に文明化するために、何ができるかを具体的かつ率直に話し合おう」と呼びかけた。
プーチン氏の狙いはボリス・エリツィン初代大統領の取り巻きに自分への忠誠を誓わせることだった。ベレゾフスキー氏はすでにプーチン氏への権力集中を嫌い、対立していた。「私たちの主人はルーブルだけ」という『資本主義宣言』をしていたホドルコフスキー氏もプーチン氏に反発し、ユコスに有利な法案を通すため数百万ドルを使った。