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ウクライナ侵攻が始まった プーチン氏の攻撃性は追い詰められたヒグマの防衛本能か
ウクライナ情勢の緊迫化を受けてルーマニアに配備された米軍戦闘機(2月17日) U.S. Air Force/Ali Stewart/ REUTERS
[ロンドン発]ウクライナ国境に最大19万人の部隊を貼り付けるウラジーミル・プーチン露大統領は21日、親露派が支配するウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認、平和維持のためとしてロシア軍を派兵した。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は境界を警戒するウクライナ軍をロシア軍が攻撃し、数日中に親露派の支配が及ばない東部地域に空爆やミサイル攻撃を行う可能性が強いと分析した。
ロシアとウクライナは一つと公言してきたプーチン氏は21日「現在のウクライナは、完全にロシア、突き詰めて言えばボリシェヴィキ(レーニンが率いた一派)と共産主義のロシアによって作られた。このプロセスは1917年の革命の直後に始まり、さらにレーニンとその仲間たちは歴史的な国土を分断するという最もずさんな方法でそれを行った」と演説し、主権国家としてのウクライナはフィクションだと切り捨てた。
「ウクライナは国ではなく、歴史的にロシアの一部だ」という考えはロシア指導層に浸透しているとされる。「キエフはロシアの都市の母だ。古代ロシアはわれわれ(ロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人)の共通の源であり、われわれはお互いなしでは生きられない」とプーチン氏は主張し、2017年にはドナルド・トランプ米大統領(当時)も「ウクライナは『本当の国』ではなく、ずっとロシアの一部だった」と発言したと報じられている。
しかし「9世紀に誕生したキエフ大公国はロシアとウクライナの基礎を築いた共同祖先の地とみなされるが、13世紀にモンゴルに征服されるまでロシアは断片的な諸侯の連合体だった。キエフを含む現在のウクライナの大部分は14世紀初頭から400年間、ポーランドとリトアニアに支配されていた」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で国際関係を教えていたビョルン・アレクサンダー・ドゥベン博士はLSEサイトに寄稿している。
武力で威嚇する「強要(compellence)」
ウクライナはソ連崩壊に伴い、1991年に独立。次第に米欧への傾斜を深めるウクライナにプーチン氏は強い懸念を抱くようになる。独裁者による侵略は自国にとって都合の良い歴史の書き換え、すなわち歴史戦争が先行することを今回の危機は私たちに教えてくれる。戦争研究所は「ロシアはすぐに本格的な侵攻を開始するのではなく、段階的にアプローチする可能性が高い」と指摘する。これは武力で威嚇する「強要(compellence)」だからだ。