コラム

<COP26>米中が電撃の「グラスゴー共同宣言」、成功に向けて大きな一歩

2021年11月11日(木)12時36分
中国の解振華・気候変動事務特使

記者会見する中国の解振華・気候変動事務特使(筆者撮影)

<続けざまの記者会見で会場を驚かせた中米特使のサプライズ協力はまだ具体性に乏しいが、事前に30回ものテレビ会議を重ねてお膳立てしたものだ>

[英北部スコットランド・グラスゴー発]英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)も残すところあと3日となった11月10日の午後6時(日本時間の11日午前3時)、ビッグサプライズが飛び出した。

「一国二制度」を踏みにじる香港国家安全維持法の強行、新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧、新型コロナウイルスの起源や初期対応の遅れ、台湾問題を巡り米中対立が先鋭化する中、温室効果ガス排出2大国の米中両国が「2020年代の温暖化対策強化に関する米中グラスゴー共同宣言」を発表した。参加する196カ国への強いメッセージとなった。

中国の解振華・気候変動事務特使と米気候変動対策大統領特使のジョン・ケリー元国務長官が続けざまに記者会見した。米国務省のホームページにアップされた「グラスゴー米中共同宣言」にうたわれた内容は次の通りだ。

【グラスゴー米中共同宣言】

・今年4月に「気候危機に対処する共同声明」を発表した米中両国は気候危機の深刻さと緊急性の認識を深めている。30年までの10年間、双方が対策を加速し、COPを含む多国間プロセスにおける協力を通じ、気候危機に取り組む。

・世界の平均気温上昇を産業革命前に比べ摂氏2度を下回る水準に抑え、1.5度に制限する努力をするパリ協定の目標を思い起こす。それぞれの国の取り組みと目標実現のために必要な努力とのギャップを埋めるため、20年代に双方が野心を高めて温暖化対策を強化する。

・世界のネットゼロ経済への移行を加速するため、双方が努力を拡大する。20年代の排出量削減に関する規制と環境基準、クリーンエネルギーへの移行がもたらす社会的利益の最大化、最終消費分野の脱炭素化と電化を促進する政策、循環型経済に関する分野、二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)技術で協力する。

・20年代に両国は温室効果ガスの一つであるメタンの排出を抑制・削減する行動を強化し、共同研究を促進する。COP27までにメタン排出規制を強化するための追加措置を策定する。中国はメタンに関する包括的かつ野心的な国家行動計画を策定する。米中は22年前半に会議を開催する。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story