コラム

<COP26>米中が電撃の「グラスゴー共同宣言」、成功に向けて大きな一歩

2021年11月11日(木)12時36分

・アメリカは35年までに100%炭素に汚染されていない電力を実現する目標を掲げる。中国は第15次5カ年計画(26~30年)で石炭消費量を段階的に削減し、これを加速するため最善の努力をする。米中両国は世界的な森林破壊を阻止するために協力する。双方はCO2排出削減措置(アベイトメント措置)が講じられていない石炭火力発電への国際的支援を排除する約束を想起する。

・必要に応じて30年の国別削減目標(NDC)および長期戦略の更新を含め、重要な10年間に野心的な行動を取る。途上国の要請に応えるため20年までに年1千億ドル(約11兆3900億円)、25年まで毎年1千億ドルを拠出する先進国の約束の重要性を認識する。

・米中両国はCOP26で、パリ協定6条(排出削減量の国際取引を行う市場メカニズム)などのルールブック(実施指針)、NDCの共通タイムフレームを完成させるため協力して取り組む。35年のNDCを25年に伝える。双方は作業部会を設置し、多国間プロセスを進めるために定期的に会合を持ち、この10年間における具体的な行動の強化に焦点を当てる。

中国の解特使「中米の間には相違点よりも合意点の方が多い」

解氏は記者会見で「中米両国の間には相違点よりも合意点の方が多く、気候変動は協力の可能性が非常に大きい分野だ。共同宣言の発表は中米両国にとって協力が唯一の選択肢であることを改めて示している」と述べた。

しかし米欧が主導し、30年までにメタン排出量を20年比で30%削減する目標に100カ国・地域以上が合意した枠組みに中国は参加していない。主要先進国で30年代、世界全体では40年代を目標にアベイトメント措置のない石炭火力発電からの移行を実現する「石炭からクリーンパワーへの移行に関する声明」にはアメリカも中国も署名していない。

6条の市場メカニズムについて解氏は「中国ではすでに全国共通市場がスタートしており、発電分野が対象だ。共通市場の運営は非常にスムーズに行われ、若干の上昇はあったものの価格は安定している。今後、この共通市場を拡大し、他分野もカバーする。この共通市場が排出量の全セクターをカバーするよう努力している」と解説する。

「共通市場でやろうとしていることは市場を使って排出削減の全体的なコストを下げ、その間に技術革新を促し、移行を加速させ、産業の改善を促進することだ。COP26で未解決の6条の問題を解決し、排出削減の努力のコストを下げ、最終的に目標を達成するため非常に強力な世界共通市場を構築できることを期待している」と話した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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