コラム

「岸田新首相は中国に圧力を」英保守党重鎮が訴え

2021年10月04日(月)21時30分

中国の制裁リストに加えられているイギリスの対中最強硬派イアン・ダンカン・スミス元保守党党首は、「就任したばかりの日本の岸田文雄首相に何を求めますか」という筆者の取材にこう答えた。

「自由な世界をリードしてもらいたい。 残虐行為、ルールに基づく国際秩序からの逸脱、人権弾圧を止めない限り、あなたの国から投資を引き揚げる、もう十分だと中国に迫る努力をしてもらいたい。世界第3の経済大国である日本は非常に大きな役割を担っている。私の体の中にも日本人の血(曾祖母が日本の武家出身)が流れている。だからこそ日本は今、自由な世界をリードし、導く機会があると言いたい。私たちは日本とともにある」

20211003_205654.jpeg
イアン・ダンカン・スミス元保守党党首(筆者撮影)

来年に迫った北京冬季五輪については「私はボイコットしたい。英政府にもボイコットしてもらいたい。どの国にも北京冬季五輪にはいてほしくない。中国に信用を与えるようなマネはしてもらいなくない」と訴えた。

ダンカン・スミス氏によると、ナチスドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まった時、英財界人はベルリンにて商談中で、帰国を求める英外務省に「将来の大きな利益になるため今、商談をまとめる必要がある。この席を離れるわけにはいかない」と返信した。目先の利益を優先し続けた結果、約6千万人もの戦災を招いた。

「今、私たちは決断を迫られている。自由な世界のリーダーとして中国への投資をやめるよう主張するのかどうか」とダンカン・スミス氏は言う。自民党総裁選で岸田首相は新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に対処する人権問題担当の首相補佐官を新設すると約束した。その言葉が本当かどうか、自由主義世界が注目している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story