コラム

「アンドルー王子は性的人身売買の犠牲者であることを知って性行為に及んだ」性接待を強いられた女性が訴え

2021年08月12日(木)19時48分
アンドルー英王子を訴えたバージニア・ジュフレ

アンドルー英王子との性行為を強いられたと主張するバージニア・ジュフレ(中央、2019年8月)Shannon Stapleton-REUTERS

<権力者や金持ちでも責任を問われることから逃れられない>

[ロンドン発]米富豪ジェフリー・エプスタイン被告=自殺 =による少女への性的虐待事件に関連して、被告と親交があったアンドルー英王子(61)=王位継承順位9位=から性的虐待を受けたとして当時17歳だったバージニア・ジュフレ(旧姓ロバーツ)さん(38)が米ニューヨークの連邦裁判所に7万5千ドル(830万円)の損害賠償訴訟を起こしました。

エプスタイン氏が多数の少女を囲っていたハーレムのメンバーだったバージニアさんは17歳だった2001年、ロンドンのタウンハウス、米マンハッタンにあるエプスタイン氏の邸宅、カリブ海のプライベートアイランドで3回にわたってアンドルー王子と性交を強いられたと主張しています。ニューヨーク州法では18歳未満との性行為は違法とされています。

メディアへの声明でバージニアさんは次のように述べています。「権力者や金持ちでも自分の行動に対して責任を問われることから逃れられない。他の犠牲者たちも沈黙と恐れの中では生きられないと気付くことを願っている。人間は声を上げて正義を求めることによって自分の人生を取り戻すことができる」

「私はアンドルー王子を訴えるという決定を安易にはできなかった。母として妻として家族が一番大事だ。この行動により、アンドルー王子とその代理人によってさらなる攻撃を受けることになることを私は知っている。しかし、私がこの行動を起こさなければ、いたるところにいる犠牲者を失望させるだろう」

エプスタイン氏は2019年に勾留中に自殺。昨年7月、元彼女の英社交界の名士ギレーヌ・マクスウェル被告を逮捕しました。これまで一貫して疑惑を否定してきたアンドルー王子は提訴に対し今のところ沈黙を守っています。しかし持ち時間は提訴から21日間。何もしなければ自動的にバージニアさんの勝訴が確定します。

16歳で「性の奴隷」としてリクルートされる

エプスタイン氏の性的人身売買がどのようにして行われたのか、15ページの訴状から事件を振り返ってみましょう。

・バージニアさんは16歳だった00年から02年にかけ、エプスタイン氏による性的人身売買と虐待の犠牲者だった。エプスタイン氏は億万長者にマッサージを提供するだけで200ドル(約2万2千円)が支払われると言って若い女の子を募集した。同じパターンで何人もの子供や若い女性がリクルートされた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中韓が米関税へ共同対応で合意と中国国営メディアが

ワールド

ロシアと米国は関係正常化に向け一歩踏み出した=中国

ビジネス

午前の日経平均は反発、自律反発期待の買い 米関税警

ビジネス

自民党財政改革検討本部が初会合、骨太健全化目標議論
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story