コラム

「武漢株がハイエナならインド変異株は最速チーター。日本は五輪がなくても生きていけるが、ウイルスが広がると高齢者の遺体が積み上がる」英専門家

2021年05月16日(日)19時01分
火葬場に運ばれるコロナ患者の遺体、ニューデリー

インドの惨状も他人事ではない(火葬場に運ばれるコロナ患者の遺体、ニューデリー) Danish Siddiqui-REUTERS

[ロンドン発]英変異株より感染力が最大50%も強いインド変異株(B.1.617.2)について、英レスター大学のジュリアン・タン名誉准教授(臨床ウイルス学)が筆者の取材に応じ、「中国・武漢株がハイエナなら英変異株やブラジル、南アフリカ変異株はライオン。インド変異株は陸上動物で最速のチーター(最高時速100キロメートル超)だ。日本は五輪を開かなくても大丈夫だが、ウイルスが広がると多くのお年寄りが亡くなる」と警鐘を鳴らす。

kimura20210516151601.jpg
英レスター大学のジュリアン・タン名誉准教授(本人提供)

英内閣の緊急事態対策委員会に科学的助言を行う緊急時科学的助言グループ(SAGE)によると「インド変異株の感染者は1週間以内に倍に増えており、英変異株より最大50%も感染力が強いとみるのが現実的だ」。日本でも4月20日、B.1.617系統が国内例として初めて検出された。日本の国立感染症研究所によると5月12日時点で計69例を確認した。インド変異株とはいったい何者なのか、タン氏との一問一答は次の通り。

──インド変異株の中にはB.1.617.1(バリアント1)、B.1.617.2(バリアント2)、B.1.617.3(バリアント3)があります。イギリスではバリアント2が急増しています。 バリアント2はどのような性質を持っていますか

「バリアント1とバリアント3、いわゆる"二重変異体"は、スパイクタンパク質(ウイルスの突起部)にL452RとE484Qの二つの変異を有しており、ワクチン耐性が高まる可能性があります。バリアント2にはL452R変異が含まれていますが、E484Q変異は含まれていないため、バリアント1やバリアント3ほどワクチン耐性がない可能性があります。しかし新しいT478K変異があり、バリアント1やバリアント3の伝染性を超えてバリアント2の伝染性を高めている可能性があります。これを確認する十分なデータはまだありません」


kimura20210516151602.jpg
出所)国立感染症研究所や欧州疾病予防管理センタ(ECDC)の資料をもとに筆者作成

──インド変異株がイギリスで流行し始めたため、ボリス・ジョンソン英首相は懸念を強めています。イギリスは5月17日に正常化に向けたロードマップのステップ3(屋内営業の再開)に進みます。6月21日のステップ4で全面的に正常化する見通しはありますか

「ジョンソン首相は5月17日に封鎖解除が進むことを発表しましたが、6月21日のステップ4についてははっきりとは口にしませんでした」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story