コラム

英ワクチン戦略に富士フイルム子会社が参加 「戦時体制」で集団免疫獲得に突き進む

2021年03月30日(火)11時22分

【4月12日以降】美容院、ネイルサロン、図書館、動物園、テーマパーク再開。レストランやパブ、バーの屋外営業再開。結婚式は15人まで。

【5月17日以降】6人または2世帯まで屋内で集まれる。レストランやパブ、バーの屋内営業可(着席)。シネマやホテル再開。屋内イベントは1千人、屋外イベントは4千人まで。結婚式は30人まで。

【6月21日】社会的距離政策を解除し、正常化する。

ジョンソン首相が昨年、第2波を鎮静化できなかったのは、感染力が最大70%も強い英変異株が英南東部ケント州やロンドンで猛威をふるい始めていたことや、欧州連合(EU)離脱後の交渉を巡り与党・保守党内強硬派の支持を取り付けるため、2回目の封鎖解除を急いだことが大きい。

ブレグジットという懸案事項が取り除かれた今、ジョンソン首相は科学者の声に忠実に耳を傾けている。

1人当たりのワクチン確保量では日英に3倍近い開き

イギリス(人口約6665万人)は8種類のワクチンについて4億5700万回分を確保。日本(人口1億2630万人)は米ファイザー、モデルナ、英アストラゼネカ製3種類のワクチン計3億1400万回分の供給を受けることになっているが、接種したのは今のところ82万5704人(計89万662回)にとどまっている。

国民1人当たりに換算すると確保したワクチンの量ではイギリスと日本の間には3倍近い開きがある。

【英政府が確保しているワクチン】
・独ビオンテック/米ファイザー(緊急使用を承認)4千万回分
・英オックスフォード大学/英アストラゼネカ(承認)1億回分
・米モデルナ(承認)1700万回分
・米ノババックス (第3相試験)6千万回分を確保
・米ジョンソン・エンド・ジョンソン(第3相試験)3千万回分を確保
・英グラクソ・スミスクライン(GSK) /仏サノフィ(第1/2相試験)6千万回分
・仏ヴァルネヴァ(第1/2相試験)1億回分
・独キュアバック(第3相試験)5千万回分

ノババックス製ワクチンは組換えタンパクワクチンで、イギリスで行われた第3相試験で89.3%の有効性が確認されている。日本国内では武田薬品工業が自社工場でライセンス生産する予定だ。

イギリスでは富士フイルムの子会社フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズが英北東部ストックトン・オン・ティーズで生産し、GSKが同バーナード・キャッスルで6千万回分を瓶詰めすることで合意した。

現在、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)で緊急使用の承認手続きが進められており、GSKは早ければ5月にも作業を開始したいという。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story