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英ワクチン戦略に富士フイルム子会社が参加 「戦時体制」で集団免疫獲得に突き進む
イギリスの科学力の源泉
イギリスは欧州最大の犠牲者12万6615人を出し、人口100万人当たりの死者数は1858人と、同72人の日本とは比べ物にならない大きな被害を出している。しかし、失敗から学ぶのがイギリスだ。日本と比較してみて思うことがいくつかある。
(1)科学者の構想力
アストラゼネカ製ワクチンを開発した英名門オックスフォード大学ジェンナー研究所セーラ・ギルバート教授のチームは、中国がコロナウイルスのゲノム情報を公開した昨年1月11日の翌日にはワクチンの設計をほぼ終えていた。
以前からギルバート教授は大手製薬会社とのパートナーシップと資金調達、世界各地で臨床試験や集団予防接種を展開する青写真を描いていた。高い安全性と有効性に加え、原価で販売、冷蔵庫で保管できる扱いやすさからも、アストラゼネカ製ワクチンがパンデミック対策のチャンピオンと言えるだろう。
(2)科学者の行動力とリーダーシップ、組織力
ゲノム解析で英変異株をあぶり出したCOVID-19ゲノム・コンソーシアム(COG-UK)のシャロン・ピーコック議長(微生物学)は昨年3月、「カネと時間の無駄遣い」と嫌味を言われながらも、大学や研究機関、医療機関のコンソーシアムを結成した。
PCR検査の5~10%をゲノム解析してウイルスの変異をリアルタイムで追跡し、ワクチン開発や政策決定に重要なエビデンスを提供している。
日本の科学者には「コロナウイルスは2週間に1度変異する程度で、インフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)に比べて変異のスピードは遅い」と変異を重視しない人が多かった。
ピーコック議長に尋ねてみると「あなた、考えてもみなさい。少なくとも1億2800万人以上が感染しているのよ。1つ1つの変異スピードが遅くても、それだけ感染していればトータルでは変異はすごい数になる。ウイルスは治療薬やワクチンも回避するので、パンデミックではゲノム追跡は不可欠よ」と教えてくれた。
信じられないことに日本はPCR検査のスケールアップで躓いた。
(3)臨床試験に参加する市民が圧倒的に多い
世界初のインターロイキン6(IL-6)阻害剤として大阪大学と中外製薬により共同開発された「アクテムラ」が臨床試験で重症患者の死亡リスクを約4分の1削減することが証明されたのを発表したのはジョンソン首相だ。
IL-6発見者の一人である大阪大学前総長の平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長に知らせると「35年前のIL-6発見からその作用機序や病気との関係に関する基礎研究を長年続けてきた成果がこのような形で世界に貢献できることは研究者冥利に尽きる」と感慨深げだった。