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アストラゼネカ製ワクチンへの疑いは晴れた EUはワクチン戦争よりイギリスと協力せよ
臨床試験を検証した米ロチェスター大学医療センターのアン・フォルシー教授は「今回の結果はAZワクチンがすべての年齢の大人に感染予防効果があることを改めて証明した。初めて65歳以上の人々にも同じような効果があることが証明されたのは素晴らしいことだ」と指摘した。
バイオ製薬(BioPharmaceuticals) R&Dのメネ・パンガロス上級副社長は「AZワクチンは致命的なコロナウイルスから世界中の何百万もの人々を守る上で重要な役割を果たせる。結果を米食品医薬品局(FDA)に提出し、緊急使用が認められたら米全土に数百万回の投与を展開する準備を進めている」と語る。
「右手の薬指が真っ青になった」
被験者の2割は65歳以上で、6割は糖尿病や重度の肥満、心臓病などコロナの症状が進むリスクが高い基礎疾患を抱えていた。にもかかわらず第3相試験で、血栓症リスクも増加せず、脳静脈洞血栓症(CVST)を発症しなかったことはAZワクチンへの信頼をさらに高めた。
EU加盟国やノルウェーで血栓症やそれに伴う血小板減少が相次ぎ、オーストリアやデンマーク、イタリアでは死亡例も報告された。少なくともEU加盟15カ国や域外の5カ国でAZワクチンの使用が一時停止される事態に発展した。
筆者のところにも「AZワクチンを接種後、指に血栓症が出て、お医者さんから2度目の接種を見送るよう言われた」「血栓ができやすい体質で、本当にAZワクチンを接種しても大丈夫なの」という問い合わせが相次いだ。
3月6日にAZワクチンを接種したという53歳の女性(ロンドン在住)は右手の薬指が紫色になった。「アクロシアノーシス」と呼ばれるこの症状は9日間も続いたという。指の写真も添えられていた。
アストラゼネカによると、欧州全体でAZワクチンの接種を受けたのは1700万人以上で、ふくらはぎ、大腿部、骨盤の深部静脈で血液が凝固する深部静脈血栓症(DVT)15件、肺塞栓症22件が報告されている。「一般的な集団で自然に発生すると予想されるよりもはるかに低く、他のワクチンでも同様だ」という。
EUの欧州医薬品庁(EMA)は18日に「血小板の減少を伴うまれな血栓症と関係している可能性は完全には否定できないものの、AZワクチン接種のベネフィットはリスクをはるかに上回る」と評価している。
EMAによると、イギリスとEUを含む欧州経済領域では16日までに約2千万人がAZワクチンを接種しており、血管内に無数の血栓がばらまかれた状態の播種性血管内凝固症候群(DIC)が7例、CVSTが18例確認された。そのうち9人は死亡(大多数は55歳未満で女性)した。ワクチンとの因果関係は証明されていないものの、可能は残るため、引き続き分析を進めている。