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アストラゼネカ製ワクチン EU加盟国が一時使用停止は新たなイギリスいじめ?
世界保健機関(WHO)のソミヤ・スワミナサン氏は15日の記者会見で「人々をパニックに陥れたくない。しばらくの間、各国がAZワクチンの予防接種を続けることを勧める。接種した人が血栓症を起こす確率は、自然発生より低い」と話した。
1700万人接種で血栓症の発症は37件
アストラゼネカによると、欧州全体でAZワクチンの接種を受けたのは1700万人以上で、ふくらはぎ、大腿部、骨盤の深部静脈で血液が凝固する深部静脈血栓症(DVT)15件、肺塞栓症22件が報告されている。「一般的な集団で自然に発生すると予想されるよりもはるかに低く、他のワクチンでも同様だ」という。
深部静脈血栓症は1年間で1千人に1人の割合で発症するため、1700万人を母数にすると、少なくとも1万7千人が発症する恐れがある。
イギリスでは1100万人がAZワクチンの接種を受け、0.5%の5万3千人が副反応を報告。大部分は頭痛、筋肉痛、発熱などで、短期間で解消されている。
アイルランドのコンサルティング会社、臨床研究機関(ICON)のアンドリュー・ギャレット上級副社長はこう語る。
「集団予防接種プログラムではそれ以前と同じように深刻な事象が観察されることは避けられない。観察された事象の頻度が通常予想されるものと不均衡であるかを評価し、そうである場合は潜在的な原因を特定することは開発・製造者や規制当局の責任だ」
その上で「デンマーク規制当局は血栓症と1人の死亡が確認されたあと慎重なアプローチをとり、14日間接種を一時停止しながら調査を行っている。これを行う際、デンマークで潜在的に予防接種が遅れるリスクと接種を継続するベネフィットのバランスをとらなければならなかった」と指摘する。
血小板減少はファイザー製ワクチンでも報告されている
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のスティーブン・エバンス教授(薬理疫学)はこう語る。
「ノルウェーから"血小板の数が減少した"という報告があったが、血栓症とそれに続く脳出血はまれな症状だ。凝固障害はコロナ患者に一般的だ。こうした人々がコロナに感染していなかったことがはっきりしない限り、ワクチン接種との因果関係を示唆するのは時期尚早だろう」
「米ファイザー製ワクチンのアメリカでの臨床試験で血小板減少があったが、ワクチンが原因ではないことが明らかにされている。AZワクチンは1千万回接種で35件の血小板減少がイギリスで報告されている。ファイザー製ワクチンも接種1千万回超で血小板減少は22件。出血性疾患の割合は2つのワクチンで大きく変わらない」