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アストラゼネカ製ワクチン EU加盟国が一時使用停止は新たなイギリスいじめ?
ファイザー製ワクチンを接種した後、血小板数がゼロになり、出血性脳卒中を起こして亡くなった米フロリダ州の産婦人科医グレゴリー・マイケルさん(当時56歳)のケースについては今年1月、筆者も【コロナ緊急連載】の中で報告している。
「海軍カレー」の教訓
イギリスやアメリカはこうした事象を割り切れるのに、ドイツをはじめとするEU加盟国が必要以上にこだわってしまうのはどうしてか。
明治時代、脚気は兵士の命を奪う原因不明の不治の病だった。イギリス帰りの海軍軍医、高木兼寛(1849~1920年、東京慈恵会医大の創設者)は脚気の原因は生活習慣にあると考え、疫学研究を進める。
根本的な原因は分からなかったが、どうやら米食に問題があることを突き止め、パン食や麦食に切り替えて脚気の犠牲者をゼロにした。その成果は「海軍カレー」として今も海上自衛隊の伝統に受け継がれている。
一方、陸軍ではドイツ帰りの森鴎外が脚気の原因は細菌など微生物にあると考え、原因究明にこだわる。海軍は食事の工夫で脚気を克服したと聞いたあとも、経験主義的な医学を信用せず、そのまま被害を拡大させてしまう。
脚気の原因がビタミンB1の欠乏であると分かったのはそれから30年後のことだ。EUを中心とする欧州の国々が原因究明にこだわり過ぎると、ワクチン接種が大幅に遅れ、逆にコロナ感染による被害を世界中に広げてしまう恐れがある。
目に余るEUのAZワクチンたたき
それにしてもEUのイギリス叩き、アストラゼネカ叩きは目に余る。
マクロン大統領は1月29日、EMAがAZワクチンの18歳以上への使用を推奨する数時間前、「現時点で65歳以上にはほとんど効果がない。初期の結果は60~65歳を勇気付けていない」「12週間置いて2回接種するイギリスのやり方はウイルスの変異を加速する」と叩きまくった。
1月25日、ドイツの大衆紙ビルトと経済紙ハンデルスブラットは「AZワクチンの65歳以上への有効性はわずか8%」と報じたが、独政府が被験者に占める56~69歳の割合の8.4%をわざと取り違えて"裏ブリーフィング"した疑いが浮上している。
独ロベルト・コッホ研究所予防接種常任委員会は65歳未満にのみ接種すべきだと勧告し、イェンス・シュパーン独保健相も「高齢者のデータは十分ではなく、承認は限定的だ」と強調した。ドイツのバイオ製薬ベンチャー、ビオンテックが共同開発したファイザー製ワクチンは今回も一切、叩かれなかった。