コラム

G7は中国の「ワクチン一帯一路」に対抗できるのか

2021年02月20日(土)13時54分

中国やロシアのワクチン外交に対して、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は英紙フィナンシャル・タイムズに「西側諸国は現在のワクチン供給の最大5%を最貧国に早急に送るべきだ」と主張した。バイデン大統領はCOVAXへ追加の財政支援を表明したものの、マクロン大統領の提案は真っ向から退けた。

自国でのワクチン接種に見通しがつくまで途上国にワクチンを回す余裕はないというのが本音だろう。

一方、ジョンソン英首相は新興感染症のワクチン開発にかかる時間をコロナワクチンで成功した300日から一気に3分の1の100日に短縮する大胆な計画をぶち上げた。途上国を支援するため将来、余るコロナワクチンの大部分をCOVAX調達プールで共有することも確認した。

ジョンソン首相は「世界の希望は科学者の肩にかかっている」と力を込める。途上国にワクチンを展開できるのは西側か、それとも中国やロシアか。グローバリゼーションによって感染症の第5波が人類を襲う中、ワクチンは重要な戦略物資になった。21世紀の覇権を巡る西側と中露の主導権争いが過熱している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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