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G7は中国の「ワクチン一帯一路」に対抗できるのか
イギリスはすでに1687万人にワクチンを接種した。EU側には「EU離脱の成功例とみなされると反EUポピュリストが勢いづく」と負のインセンティブが働く。英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが共同で製造するワクチンは有効性にあらぬ疑念が唱えられ、スケープゴートにされてしまった。
米デューク大学の調査では、世界人口をカバーするのに十分なワクチンを製造するには3~4年かかる。そうした中、高所得国とワクチン生産力を有する2~3の中所得国がすでに38億回分近いワクチンを購入、さらに50億回分を調達する選択肢がある。
COVAXに参加する約190カ国の人口の20%にワクチンを接種するには1回接種で11億4千万回分、2回接種ではその倍が必要になる。しかし、これまで世界に展開されたワクチンの75%を接種したのはわずか10カ国で、130カ国はまだ1回目の接種も受けていないのが実情だ。
デューク大学の調査を担当したアンドレア・テイラー氏は「高所得国や一部の中所得国が一定割合までワクチンを接種した後、COVAXの枠組みを通じて余剰ワクチンを途上国に割り当てる交渉が進行中だが、そうするインセンティブはほとんど働かない」と打ち明ける。
中国やロシアのワクチン外交
そのすきを突いて、中国やロシアがワクチン外交を展開している。
英紙ガーディアンのまとめによると、中国はインドネシアやトルコ、ブラジル、エジプト、メキシコなど27カ国に対して4億2430万回分のワクチンを、ロシアはインド、ブラジル、ウズベキスタン、エジプト、メキシコなど20カ国に3億8810万回分を供給する。
中国共産党の機関紙系国際紙、環球時報(英語版)は「"中国のワクチン外交は信用できない"という西側メディアの誹謗中傷は事実に反する。中国製ワクチンを購入した国はすべて臨床試験を実施しており、地元の保健当局が緊急使用を承認している。価格も手頃で途上国に希望を与えている」と主張している。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はワクチンに1950年代の米ソ冷戦宇宙開発競争を思い起こさせる「スプートニクV」と名付けた。しかしロシア国内でのワクチン接種は100人当たり2.7回とイギリスの25回に比べて進んでいない。プーチン大統領への不信感が背景にあるとみられている。
「世界のワクチン工場」と言われるインドも、中国が近隣諸国にワクチン外交を展開しているため、対抗して1560万回分以上をネパールやバングラデシュなど17カ国に提供した。西側諸国にとってはインドをどう巻き込んでいくのかが大きなカギを握る。