コラム

英変異株で致死率は65%も跳ね上がった 新局面を迎えた対コロナ戦争【コロナ緊急連載】

2021年01月23日(土)13時54分

「実験室の研究では、これらの変異により、南ア株とブラジル株は免疫防御を逃れる可能性があり、現在のワクチンの有効性に影響を与えるだけでなく、以前に感染した個人が再感染する可能性を高める恐れがある」と懸念を強めた。

英イーストアングリア大学ノリッジ医学部のポール・ハンター教授(疫学・公衆衛生)は「致死率の増加の可能性についての結論は、本質的には同じデータを使って異なるグループによって行われた分析から導き出される。異なる分析の間で推定される死亡リスクの増加にはかなりの違いがあるものの、大半が死亡リスクの増加を示している」と分析する。

そして「エビデンスの質が最も高いと考えられるイングランド公衆衛生サービス(PHE)の分析結果は基本的にイギリス株に感染すれば他の株より28日以内に死亡する可能性が65%高いことを意味している。本当に残念な発見だが、新規感染者数が急速に減少していることを考えると、今後数週間で死亡者数が減少し始める可能性がある」と締めくくった。

英紙タイムズ電子版は21日、日本の与党幹部の声として「2032年に再び東京五輪・パラリンピック開催のチャンスが与えられる可能性を残して面子を保ちながら、中止を発表する道を探っている」と報じている。

コロナ対策は国境管理の強化、都市封鎖を含めた社会的距離政策、ワクチン接種の組み合わせに尽きる。菅義偉首相は18日の施政方針演説で「コロナに打ち勝った証として、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と繰り返したが、ウイルスが急激に変異し始めた現状を直視すると、中止発表はもはや「時間の問題」と言えるだろう。

(おわり)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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