コラム

英変異株で致死率は65%も跳ね上がった 新局面を迎えた対コロナ戦争【コロナ緊急連載】

2021年01月23日(土)13時54分

その分析結果を見てみよう。

・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院 イギリス株感染者の致死率が35%増(検査を受けた120万人が調査対象。死者2583人、このうち384人がイギリス株感染者)
・インペリアル・カレッジ・ロンドン 同36%増
・エクセター大学 同91%増
・イングランド公衆衛生サービス(PHE) 同65%増(イギリス株感染者9万2207人と同数の他株感染者が調査対象)

不揃いの分析結果は何を物語るのか

不揃いの分析結果をどう見ればいいのか。

NERVTAG のメンバーで感染症数理モデルのスペシャリスト、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授は「60歳の場合、他の株に感染すると1000人に10人が死亡するのに対して、イギリス株では1000人に13人が死亡する恐れがあるということだ」と英メディアに対して解説している。60歳なら致死率は30%アップするということだが、その意味をもう少し見ていこう。

NERVTAG の報告書について、英エジンバラ大学のローランド・カオ教授(獣医疫学・データサイエンス)は次のように語った。「提示された証拠はイギリス株に感染した個人はより高い割合で死亡することを示唆している。死亡の増加は、入院したコロナ患者がより多く死に至るのではなく、より多くの患者が重症化して入院した結果だと説明されている」

「イギリス株は特にロンドン周辺で見られる病院での予想以上に高い逼迫の原因と思われる。従って感染者数の減少を示す最近の結果は朗報であり、イギリス株は都市封鎖など既存の対策によって制御可能であることを示唆している。死亡に関するこれらの結果は、病院の負担が引き続き大きく、より長期間の制限が必要であることを意味している」

英レディング大学のイアン・ジョーンズ教授(ウイルス学)は「ウイルスの感染率が上昇すると致死率が高くなる恐れがある。しかし致死率が1%であろうと1.3%であろうと、少数の人々にとって非常に危険なウイルスであり、回避するのが最善だという事実に変わりはない。回避は封鎖措置を厳守し、ワクチン接種の機会が与えられたらすぐに接種する意欲によって達成される」と呼びかけた。

さらなる変異で再感染の恐れ

英ウォーリック大学医学部のローレンス・ヤング教授(ウイルス学)は「最近の実験で、イギリス株は米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンを接種した患者の抗体によって細胞への感染を阻止できることが確認されていることを強調することが重要だ。しかし南アとブラジルで特定された変異株はウイルスのスパイクタンパク質にさらに多くの変異をもたらすため、心配だ」と言う。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、持続可能性規則の変更検討へ 米カタールが圧力

ワールド

ルラ氏とトランプ氏、マレーシアで週末会談の可能性=

ビジネス

ウーバー、EV限定配車サービスを「エレクトリック」

ワールド

韓国中銀、政策金利2.50%に据え置き 予想通り
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story