コラム

次期米国務長官から「車にはねられ、轢かれた犬」と見捨てられたイギリス

2020年11月26日(木)16時45分

欧州におけるチーム・バイデンの優先順位は(1)クリントン民主党政権の政治的レガシー(遺産)であり、アイルランド系アメリカ人が望む北アイルランド和平の堅持(2)EU、フランス、ドイツとの協力関係(3)トランプ大統領のクローンであるジョンソン政権──という順番になる。

バイデン次期政権にEUよりイギリスとのFTA(自由貿易協定)締結を急ぐ様子は今のところ全く感じられない。

EU離脱後の協定交渉が難航しているのは、ジョンソン首相をはじめとするイギリスの強硬離脱派だけに責任があるのではなく、「オール・オア・ナッシング」の非妥協的な交渉姿勢を貫くEUにもある。しかしバイデン氏もブリンケン氏もEU離脱という原因を作ったイギリスに問題があるという立場だ。

今月いっぱいとされるデッドラインが刻々と迫る中、「合意なき離脱」と「アメリカとのメガFTA締結」いう2つのカードを失ったジョンソン首相は新型コロナウイルスの犠牲者拡大で支持率低下に歯止めがかからず、ますます隘路に追い込まれている。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

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