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世界はなぜ「離脱の時代」を迎えたか──英国のEU離脱、揺れるルノー・日産連合、トランプの離脱ドクトリン
EUを離脱するメイ英首相(筆者撮影)
[ブリュッセル、パリ発]英国の欧州連合(EU)離脱協定書と新たな関係についての政治宣言が11月25日の日曜日、ブリュッセルで開かれたEU臨時首脳会議で正式に合意された。45年に及んだ「結婚生活」の破局にEU首脳の多くは「悲しい日」「悲劇だ」と表情を曇らせた。
しかし、ジャン=クロード・ユンケル欧州委員長は言葉とは裏腹に両手を広げて歓喜の表情を浮かべた。連邦主義者のユンケル氏は「最善で唯一可能な合意」と欧州の結束を乱し続けてきた英国を突き放した。
当のテリーザ・メイ英首相は最大の難関である英下院採決を前に口元を引き締め、「楽観主義に満ちている」と強がった。メイ首相は国民に宛てた書簡で「全身全霊を込めて下院で過半数を勝ち取り、英国と全国民のためにこの離脱協定を実現する」と誓った。
クリスマスまでに下院で承認を得るには320票が必要だ。政権の基礎票は324票だが、北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)10人、保守党内のEU残留派最大16人、「合意なき離脱もやむなし」と鼻息が荒い強硬離脱派40~80人がメイ首相の合意案に異を唱えている。
世界は「統合」から「離脱」へ
議会を通るのか、予想できる人はおそらく1人もいないだろう。それにしても、どうして世界は「統合」「協調」から「離脱」に逆回転を始めたのだろう。
日産自動車会長カルロス・ゴーン容疑者の報酬隠し事件も、日産の経営権がルノーとの「不可逆的な経営統合」で、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の支配下に置かれることから逃れる「緊急避難措置」とみる向きもある。
EUのメカニズムはまさに「不可逆的な統合」であり、それが逆に離脱バネを強めている。エマニュエル・マクロン仏大統領が労働法改革に着手したものの、フランスは週35時間労働。英国の上限は週48時間。日産もフランスより英国で車を作った方が効率的だ。
労働者の既得権ががっちり守られ、若者が就職するチャンスは限られている。このため、起業家や金融関係者ら30万人のフランス人が祖国を脱出して、英国で働く。今年5月、ヘンリー王子とメーガン妃の結婚式をウィンザー城のロングウォークで取材した時、そんな1人と出会った。