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「人道大国」がどんどん不機嫌になる理由 北欧スウェーデンでも極右政党が台頭
スウェーデンのイェーテボリで街頭演説を行うスウェーデン民主党のオーケソン党首 Adam Ihse/REUTERS
[ロンドン発]寛容と福祉国家の国として知られる北欧のスウェーデンでも反移民・難民を叫ぶ極右政党が台頭している。9月9日に迫ってきた総選挙(定数349、比例制)で、ネオナチの起源を持つスウェーデン民主党が議会第1党をうかがう勢いを見せている。
ジミー・オーケソン党首(39)はTVや街頭演説で「スウェーデンに住む人はこの国の社会に適応する必要がある」と、移民規制の強化を繰り返し訴えている。同党が標的にするのはスウェーデンの価値に従わないイスラム系移民、難民、犯罪、社会自由主義、多文化主義である。
世論調査では与党の社会民主労働党が首位を走るが、8月30日のSetioと同月30日~9月1日のYouGovの調査でスウェーデン民主党(それぞれ24%と24.8%)が社会民主労働党(同22.1%、23.8%)を僅差で逆転して首位に立った。
ついこの間まで完全雇用、高福祉高負担の成功例としてもてはやされた「スウェーデン・モデル」は一体どうしてしまったのか。背景には移民や難民に対する嫌悪、排外主義が渦巻いている。
福祉大国に変わりはないが
スウェーデンの成長率は3.3%。失業率は6%。2015年時点の国民負担率は56.9%で、日本の42.6%(財政赤字を含めた潜在的な国民負担率は48.7%)より高い。所得格差を示すジニ係数(1に近づくほど格差が広がる)は13年の0.268から16年には0.282に上昇したものの、米国の0.39、英国の0.35に比べると随分、低い。
穏健党のカール・ビルト首相時代(1991~94年)に市場主義を導入したものの、スウェーデンはまだまだ世界に冠たる福祉国家だ。しかしその寛容の理念が逆に人を不機嫌に、そして不寛容にしてしまう。
同国の犯罪防止国民会議の調査では2016年に国民の15.6%が暴行や脅迫、性犯罪、強盗などの被害に遭っていた。前年の13.3%から上昇し、06年に統計がとられるようになってから最悪を記録。05~14年には平均0.9%だった性犯罪は2.4%に跳ね上がり、若い女性の14%が被害を訴えた。
移民2世、3世の若者がギャング団を結成し、銃を使った殺人が多発するようになり、1990年代は年4件だったのが昨年は10倍の約40件にまで膨れ上がった。銃撃事件は306件。今年8月には南西部ヨーテボリ郊外で100台以上の車が放火され、容疑者の1人がトルコで拘束された。