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非自由主義を宣言したハンガリーのオルバンが議会選挙で圧勝した理由
2014年にはハンガリー系住民が多いルーマニア中部トランシルヴァニア地方の大学で「ハンガリーは自由主義の原則と手段から決別しなければならない」と宣言した。「自由主義的でも、おそらく民主主義的でもないシンガポール、中国、インド、ロシア、トルコといった国々が成功を収めている。自由主義国家、福祉国家の次に来るのは『就労に基づく国家』で、ハンガリーはそこに向かっている」
「ハンガリーは単なる個人の集合体ではない。組織され、強化されなければならない一つの共同体だ」という国家像を明確に描いてみせた。
2015年の欧州難民危機ではバルカン半島を北上してくる難民を食い止めるため、セルビアとクロアチアとの国境に高さ4メートルもある有刺鉄線のフェンスを523キロメートルにわたって張り巡らした。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が主導したEUの難民割当制を拒否。難民を「イスラム教徒の侵略者だ」と呼んで自らを正当化した。
敵はジョージ・ソロス
オルバン首相は「ハンガリー・ファースト」を声高に唱える国家主義者だ。攻撃の矛先はハンガリー出身の米投資家でブダペストに中央ヨーロッパ大学を創設したジョージ・ソロス氏にも及び、移民を支援する非政府組織(NGO)を禁止する「ソロス阻止」法案を提出した。
しかしオルバン首相自身、1989年にソロス氏のオープン・ソサイアティ奨学金を最初に受けた3人のうちの1人で、英名門オックスフォード大学に留学している。別の1人は同大学の副学長になったが、ソロス氏が攻撃にさらされたことから大学の存続が一時、危ぶまれた。
自由主義的で「開かれた社会」を目指すソロス氏はオルバン首相にとって格好の「外敵」だ。世界金融危機の犠牲者を味方につけるため、極右政党ヨッビクと同じく、オルバン首相は、グローバリゼーションの象徴である移民に集中砲火を浴びせ、戦争で国土を失った歴史的な屈辱感と排外主義をあおってきた。
プーチン首相への崇拝を隠さないオルバン首相が圧倒的な多数で選ばれたことは欧州の未来にとって何を意味するのか。EU懐疑主義政党の得票率はフランスで4割、イタリアで5割を占めるようになり、オーストリアやチェコでも勢力を拡大している。ドイツが主導した緊縮策で欧州大陸は不満をため込んでいる。
緊縮策を緩めて上手くガス抜きができるのか、それとも予測のつかないかたちで爆発してしまうのか。暗く、長いトンネルの出口はまだ見えない。
【参考記事】
ハンガリーで民主主義の解体が始まる──オルバン首相圧勝で
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