- HOME
- コラム
- 欧州インサイドReport
- イタリア「五つ星運動」31歳首相誕生までのシナリオ…
イタリア「五つ星運動」31歳首相誕生までのシナリオ 最大の障害は民主党のレンツィ元首相だ
首相になる可能性が出てきた「五つ星運動」のディマイオ党首(3月2日、筆者撮影)
[ローマ発]欧州連合(EU)と単一通貨ユーロに強い疑念を唱えてきた新興の市民政党「五つ星運動」と極右政党「同盟(旧・北部同盟)」が大躍進したイタリア総選挙について、国際問題研究所(iai)のエリオノーラ・ポリ研究員にインタビューした。
市民政党を阻む障害
ポリ氏の解説によると、上下両院で第1党になった「五つ星運動」のルイジ・ディマイオ党首(31)が投票前に発表した組閣名簿のメンバーは左派中心。選挙期間中に取り沙汰された「イタリア第一!」を掲げるナショナリストの「同盟」と組む「EU懐疑派連立政権」の線は薄れ、民主党との「左派連立政権」が最も有力になってきた。
しかし「五つ星運動」を目の敵にするEU統合派の民主党書記長マッテオ・レンツィ元首相が「総選挙での敗北の責任を取って辞任するが、次の政権が樹立されてからだ」と釘を差しており、「五つ星運動」政権誕生を阻む最大の障害になっている。
民主党の敗北は、2016年12月の憲法改正国民投票で有権者から不信任を突き付けられ首相を辞任したレンツィ氏を再び首相候補に担いで今回の総選挙を戦ったことに尽きる。
過去、首相を4期務めたシルビオ・ベルルスコーニ元首相(81)の「頑張れ(フォルツァ)イタリア」が票を伸ばせなかったのは、ベルルスコーニ氏が脱税で公職から追放されており、選挙に勝っても首相にはなれないからだ。このため、中道右派連合の票はマッテオ・サルヴィーニ書記長率いる「同盟」に流れた。
左派色を強める「五つ星運動」と、もともとEUの枠組み内でイタリア北部の自治拡大や独立を主張していた「同盟」はグローバリゼーションと自由貿易への反対票を集めたという点では共通している。
豊かな北部を支持基盤とする「同盟」はユーロ導入、欧州債務危機を経て、EUへの疑念を強めるようになり、ユーロからの離脱を唱えていた。サルヴィーニ書記長になって穏健なEU改革路線に転換し、支持を広げた。
一方、貧しい南部で支持を広げた「五つ星運動」はイタリアで生まれたすべての市民の生活を守ることを最優先課題に掲げる。1週間の社会奉仕と求職活動を継続していることを条件に、全国一律月780ユーロのベーシックインカム(最低限の所得保障制度の1つ)を導入することを公約にした。ベーシックインカムは決して荒唐無稽な政策ではない。