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ドイツ、大連立へ 内部対立はらむ中道左派は終わるのか
メルケル政権に入るか否かが問われた社会民主党(SPD)臨時党大会で演説するシュルツ党首(1月21日) Wolfgang Rattay-REUTERS
[ロンドン発]ドイツの最大野党・社会民主党(SPD)は21日、ボンで党大会を開き、執行部が合意したアンゲラ・メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)との大連立協議を進めることを決めた。まだ、最終合意を待たなければいけないが、これで復活祭前の3月中にも大連立政権が発足する見通しが強まった。
賛成362票、反対279票。差は予想以上に縮まっていた。マルティン・シュルツSPD党首は演説で「欧州はドイツを待っている。SPDなしにそれは実現しない」と力説した。しかしエマニュエル・マクロン仏大統領から電話で大連立を求められたことを披露すると、会場にはうめき声と称賛が複雑に交錯した。
投票前の討論は4時間以上も続き、大連立反対の急先鋒である青年部代表ケヴィン・キューネルト氏(28)が「我が党は大連立という終わりのない罠にハマっている」と改めて下野を訴えた。SPDは2度の大連立で大幅に支持を減らしている。
青年部の代表者は80~90人で、当初は大連立に向け楽観ムードが流れていたが、フタを開けてみると賛成、反対の差はわずか83票だった。
SPDは昨年9月の総選挙で戦後史上最悪の得票率20.5%まで沈んだ。12年もの長期政権になったメルケル首相への飽きが広がる中、対抗馬のシュルツ党首は明らかにカリスマを欠いていた。テレビ討論でもメルケル首相との違いを鮮明にできなかった。
しかし中道左派の社会民主主義政党の低迷は何もドイツに限った話ではない。大統領選と国民議会選で壊滅的な敗北を喫したフランスの社会党しかり、スペインの社会労働党しかり。イギリスの労働党も先の解散・総選挙までどん底をさまよっていた。
競争力回復の裏で低賃金労働増
脱工業化時代を迎え、製造業に携わっていた従来の労働者階級が崩壊し、中道左派の支持母体だった労働組合の組織率が下がったことが理由の一つだ。1990年の東西ドイツ統一による財政負担で成長力を失ったドイツはSPDのシュレーダー政権下、労働市場・社会保障改革を大胆に進めた。賃金と社会保障費を思い切りカットして、競争力を取り戻した。
これがドイツ経済を力強く蘇らせたのだが、SPDを支持していた低賃金労働者は経済的にも政治的にも行き場を失った。「ミニジョブ」と呼ばれる月450ユーロ未満で働く労働者は専業で510万人(2014年)。ユーロ危機、難民危機で失業者や低所得者、主権主義者の不満は、反欧州連合(EU)・ユーロ、反移民・難民を叫ぶ極右の新興政党「ドイツのための選択肢」に流れ込んだ。
欧州全体を見渡した時、メルケル首相との大連立を決断したシュルツ党首の選択は間違っているとは言えないだろう。イギリスの離脱で大きな試練を迎えたEUはメルケル首相の強いリーダーシップを求めている。