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土壇場でひっくり返されたブレグジット合意 初めて見えたEU離脱のほのかな光明
現状を維持するため北アイルランドだけが単一市場と関税同盟に残ればDUPが納得せず、北アイルランドも単一市場と関税同盟から離脱して国境が復活すればアイルランドが合意しないというブレグジットのジレンマ。
このジレンマを解消するため編み出されたのが「レギュラトリー・アライメント(規制上の調整)」という誰にもはっきりと説明できない言葉だった。アイルランドがこの言葉をのみ、離脱交渉は第1フェーズから第2フェーズに向けて動いたかに見えた。
メイ首相がユンケル委員長とランチをともにしていた午後2時、DUPのアーリーン・フォスター党首が突然、「我々の立場は明確だ。北アイルランドはイギリスの他地域と同じようにEUを離脱しなければならない」とテレビで声明を読み上げた。
英紙デーリー・テレグラフによると、ブリュッセルでテレビを見ていたイギリスの外交官が「なんてこった」とうめき声を上げた。DUPが閣外協力を止めれば、メイ政権は崩壊する。
メイ首相は席を立ってフォスター党首に電話を入れ、「アイルランド島とグレートブリテン島の間のアイリッシュ海に国境ができるわけではないのよ」と説得したが、フォスター党首は首を縦には振らなかった。
ユンケル委員長とメイ首相は記者会見で落胆の色を隠せなかった。交渉は継続されることになった。次のEU首脳会議は12月14、15の両日。それまでにメイ首相がフォスター党首を説得できなければ、イギリスは何の合意も得られないままEUを去るか、EU離脱を断念する事態に追い込まれるかもしれない。
DUPに対するメイ首相の根回しが足りなかったのか。それとも、いつでも拒否権を発動できるぞというDUPの政治的パフォーマンスに過ぎないのか。真相は分からない。
ただ、アイルランドと北アイルランドの国境を現状のまま維持する「レギュラトリー・アライメント」はまだ全容こそ現していないものの、EUとイギリスの間にも当てはめることができる。
その意味ではこれまで全く先が見通せなかったブレグジットにわずかだが、一筋の光明が差したと言えそうだ。