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カタルーニャ独立問題、神出鬼没プチデモンのゲリラ戦に翻弄されるスペイン首相
マドリードではこの日、ホセ・マーサ司法長官がプチデモンと閣僚、カルマ・フルカデイ州議会議長ら計20人を国家反逆罪、扇動罪(最高刑期15年)、公金不正使用罪(同6年)で訴追する180ページもの起訴状を読み上げた。1日の独立住民投票で懲りたラホイ政権は自治権剥奪という伝家の宝刀を抜いたものの、民主的な対応を迫られ、即、拘束という強硬手段に出ることはできなかった。
プチデモン前州首相(左端)とフルカデイ州議会議長(中央)(21日、独立派集会で筆者撮影)
ちょうどその頃、BBCのキャスターが驚いたように「州政府庁舎から空を写し、『おはよう』と書き込んだプチデモンは仏マルセイユに車を走らせ、飛行機でブリュッセルに移動した。弁護士と面談していると思われるが、ベルギー内相が政治亡命を受理して審査しているかもしれない」と中継した。プチデモンは閣僚5人と国境を越えたらしい。マドリード(中央政府)もメディアも完全にプチデモンの術中にハマっている。
自治権を剥奪された州議会が粛々と解散され、独立派3党は戦う方針を表明した。直近の世論調査では独立派3党が42.5%、独立に反対するスペイン統一派(ユニオニスト)が43.4%。12月の州議会選挙は大接戦になる見通しだ。
ラホイ首相を支持するカタルーニャ国民党の州首相候補(筆者撮影)
すでに選挙戦は始まっている。しかし独立運動が罪であるスペインで独立派3党はどんな選挙戦を展開するのだろう。とても想像できない。投獄による口封じを怖れてブリュッセルに避難したプチデモンはEUに選挙監視団の派遣を要請するのか。プチデモンは自治権剥奪という非常事態下で州議会選挙が行われることを最初から望んでいたのかもしれない。
前例のない自治権剥奪も、「暴力」が構成要件になっている国家反逆罪の適用も議論の余地を残す。プチデモンに率いられた独立派は約900人が負傷させられる被害に遭いながら、一切抵抗しない無抵抗・非暴力主義を貫いてきた。ラホイ率いる国民党はフランコ独裁体制の流れをくむ。プチデモンはカタルーニャの深層心理に働きかけ、ラホイにフランコの亡霊を重ねようとしている。
半自動小銃で軽武装した州警察が州政府庁舎に横付けしたのも「中央政府に言われたことはきちんとやっている」という国家警察向けのポーズだったに違いない。プチデモンと閣僚5人はどうしてブリュッセルに高飛びできたのか。要人警護を担当する州警察がプチデモンの居場所をつかんでいなかったということは常識では考えにくい。
州議会選挙が平穏に行われ、その結果を受けてカタルーニャ州政府と中央政府の話し合いが行われ、自治権を拡大したカタルーニャはスペインに残る、そんな見方が市場では強まってきた。