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厳戒のクリスマス、ベルリンテロで難民申請者を公開捜査 開放政策ではテロは防げない
トラック突入テロで犯行声明を出した過激派組織ISにとって最高のシナリオは、難民受け入れを表明したドイツで反難民感情が強まり、ドイツだけでなく欧州連合(EU)加盟国全体で難民支援策が後退、欧州に流入した難民がますます絶望の淵に追い込まれることだ。絶望は過激化の温床となり、大量のテロリスト予備軍を作り出す。
そして極右勢力が騒ぎ出せば、ホスト国VS難民、西洋VSイスラムの対立はさらに深まる。英国でEU離脱を主導し、反難民・反移民感情をまき散らす英国独立党(UKIP)のファラージ元党首は「ベルリンから恐ろしいニュースが飛び込んできたが、驚きはしない。こうした事件はメルケルのレガシー(政治的遺産)になるだろう」とツイートした。
EU国民投票の最中に極右思想にとりつかれた男に惨殺されたEU残留派の故ジョー・コックス労働党下院議員の夫ブレンダンさんはツイッターで「ファラージは過激派の犯行を政治家のせいにした。こじつけもいいところだ」と反論した。
これに対し、ファラージ氏はラジオ番組で「ブレンダン氏は(人種差別・ファシズムと戦う)市民団体『嫌悪ではなく希望を』を支援している。その団体は素晴らしくて平和という仮面をかぶっている。がしかし、実際は暴力と非民主化を追求している」と毒舌を吐いた。
ベルリンはテロの恐怖に屈することなく、22日、クリスマスマーケットを再開する。テロリストはもとより、反EU・反移民・反難民を声高に唱える極右勢力の攻勢に、「EUの女帝」と呼ばれるメルケル首相はどこまで持ちこたえられるのだろう。
ナチスのユダヤ人虐殺、ゲシュタポ(秘密国家警察)の生々しい記憶が残るドイツにとって、反移民・反難民はユダヤ人排斥の引き金になった歴史的な事件「水晶の夜」を思い起こさせる。また共産主義体制下の旧東ドイツ・シュタージ(秘密警察)の反省から治安・情報当局の権限は厳しい制約を受け、オープンであることや個人情報などのプライバシーが最大限に重視されている。
国境を開いたまま、手足を縛られた治安・情報当局がテロを防ぐのは実際のところ非常に難しい。ロンドンでは観光名所・バッキンガム宮殿で衛兵交代が行われる際、道路が閉鎖され、非常事態宣言下のパリは7500人の厳戒態勢が敷かれた。モスクワではフェスティバルで人が頻繁に集まる公共スペースは突入テロを防止できるようトラックを駐車しバリケードを築くという。オランダ総選挙、フランス大統領選、ドイツ総選挙と選挙が続く新年の欧州は一波乱も二波乱もありそうだ。