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愛国化する世界──蓮舫氏の二重国籍とフランスの「国籍と名前」論争
モロッコ出身の父親とアルジェリア出身の母親の間に生まれたダディ女史は娘に「ゾラ」という母親の名前を付けた。ゼムール氏はこれを問題視し、「スキャンダルだ。フランスの名前を付けられなかった子供はフランス人ではない。フランスの名前を付けることが過去への決別とフランスの未来への統合の証になる」と主張した。ゼムール氏にとってフランスの名前とは、フランスの聖人カレンダーにある名前だ。イスラムの名前はフランス人の名前ではないと切り捨てる。これに対し、ダディ女史は「愛する母親の名前を娘に付けることは何百万人のフランス人が日常的に行っている。ゼムール氏には治療が必要よ」と激しく反論した。
ドーバー海峡を隔てた英国でも6月に行われた欧州連合(EU)国民投票で「イングリッシュ・ナショナリズム」が盛り上がり、EU離脱の原動力となった。離脱派の旗頭になったボリス・ジョンソン現外相は、英国民が離脱を選んだ日を「英国独立の日」と呼んだ。ニューヨークで生まれたジョンソン外相は米国籍も保有する二重国籍者で、12年には米国のパスポート(旅券)を更新している。
いい加減なイギリス人
昨年2月に米国籍から離脱する考えを表明し、首相を目指すシグナルと騒がれたが、今年7月、米紙ワシントン・ポストが調べたところ、まだ米国籍から離脱していなかった。英国をEUから独立させるより、首相を目指すなら自分が米国籍から離脱する方が先決問題ではないかと思うのだが、いい加減をもってよしとする英国人らしくて少し救われる思いがする。英国政府のホームページには「英国籍を保有していれば重国籍者でも公務員になれる。75%のポストは英国籍を持つ重国籍者に開かれている」と記されている。重国籍者は情報機関では働けないと言われるが、イスラム過激派のネットワークに潜り込む重国籍者もいるので一律に線を引いているわけではない。
民主的な手続きで選ばれる政治家の場合、国家へのコミットメントは政治家の言動から有権者や政党、議会が最終的に判断するのが適切だろう。外交上、問題が生じるのであれば重国籍の放棄は必須だ。