コラム

パナマ文書で注目を浴びるオフショア市場、利用するのは悪くない?

2016年04月14日(木)17時00分

 一昔前ならオフショアは金融機関やヘッジファンド、富裕層だけが利用できた特権だったかもしれない。が、そのハードルは著しく下がり、今では年金基金を通じて多くの人がオフショアの恩恵に預かっている。金融機関を通じてオフショアファンドやオフショア生保を利用している人も珍しくない。核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、非人道的な独裁者がオフショアを悪用して、資金を動かしたり、不正蓄財を行ったりするのを許してはならないが、必要以上にオフショアを規制するとグローバル化の手かせ足かせになる。08年の世界金融危機をきっかけにオフショアを使った資金の動き、課税の透明性、健全性を増す国際的な取り組みが経済協力開発機構(OECD)を中心に強化されている。

問題なの秘匿性

「パナマ文書」が炙りだした問題点は、オフショアで設立された会社の秘匿性の高さにある。その象徴がオフショアに設置された無名のメールボックスだ。実際の経済活動はオフショアでは行われていない。ペーパーカンパニーのメールボックスに送られてくる郵便物を雇われた地元住民が回収し、オンショアにいる運用者に転送してくる。本人でなくても会社を登記できたり、無記名株(株主の名前を表示しない株券)が認められたりしていることで誰が株主なのか分からなくなる不透明性は、武器や麻薬取引など犯罪や、脱税、過剰な租税回避、不正蓄財の格好の隠れミノになる。パナマのように顧客の秘密を守るよう義務付けた法律を持っている国も残っている。

 最大の問題と言える無記名株を廃止して、会社登記の開示を義務付け、透明性を増していくことが今回の問題の正しい対応策だ。オフショアとオンショアの格差をなくし、オフショアを、グローバル化を発展させる透明で健全なツールにしていくことが大切だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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