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シリアからのサプライズ撤退を発表したプーチン大統領の権謀術数 ターゲットはメルケル独首相だ
メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)も得票率を下げたが、下院から消滅した自由民主党を除き、すべての既存政党が負けていると表現した方が正確だ。つまり今回の州議会選は「既存政党VS反難民の新興政党」という構図だった。そんな中でCDUより危機的な状況に陥ったのが戦後、二大政党としてドイツ政治の片翼を担ってきた社会民主党(SPD)なのだ。3つのうち2つの州で「ドイツのための選択肢」の得票率を下回っている。もはやSPDを二大政党と呼ぶのは適当ではなくなった。
「ドイツのための選択肢」のフラウケ・ペトリー共同党首は「ドイツは根本的な問題を抱えている。それが選挙結果に現れた」と凱歌をあげ、難民ルートのバルカン半島封鎖を主導するオーストリアの首相ファイマンは「難民がドイツを目指して押し寄せるのを止めるため、メルケルは受け入れ制限を設けるべきだ」と訴える。
CDUの姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)党首ゼーホーファーは「選挙結果を無視して、これまで通りのことを続けるのが答えではない。ドイツ政治は地殻変動を起こした」とメルケルに政策転換を促している。ポイントは2つ。難民の受け入れ制限と国境管理・警備の強化だ。しかし、門戸開放にこだわるメルケルは「私たちが必要としているのはヨーロピアン・ソルーション(欧州全体の解決策)だ。それには時間がかかる」と頑なだ。
米大統領フランクリン・ルーズベルトは1941年の一般教書で「表現の自由」「信仰の自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」という人類の普遍的な4つの自由を高らかに掲げた。いま、「死からの自由」「移動の自由」を掲げて譲らないメルケルに甘い誘いを投げかけてくるのは謀略家のプーチンだけだ。