韓国で今「女性徴兵論」が流行る理由
コロナ禍でも徴兵検査を受ける韓国の若者たち(2020年3月) Heo Ran-REUTERS
<出生率の低下で、国防に要する人員が質量ともに不足しているから、というのは表向きの理由で、裏には若い男性の不満と、彼らに取り入ろうとする与野党の思惑がある>
最近韓国では「女性徴兵論」に対する議論が白熱している。今年の4月19日に青瓦台(大統領府)のホームページには「男性だけでなく、女性も兵役に就くべき」と訴える国民請願が掲示され、29万人以上が賛同した。請願の内容は次の通りである。
「出生率の低下と共に韓国軍は兵力の補充に大きな支障が生じています。その結果、男性の徴兵率は9割近くまで上昇しました※。過去に比べて徴兵率が高くなったことにより、兵役に不適切な人員さえ無理やりに徴兵の対象になってしまい、軍の全体的な質の悪化が懸念されるところです。これに対する対策として、女性も徴兵の対象に含め、より効率的に軍を構成すべきだと思います。すでに将校や下士官候補として女性を募集していることを考慮すると、女性の身体が軍の服務に適していないという理由で女性を兵役の対象にしないことは言い訳にしか聞こえません。
さらに、現在は過去の軍隊とは異なり、近代的で先進的な兵営文化が定着されていると存じております。女性側もこの点はすでに把握しており、多くのコミュニティを見た結果、過半数の女性が女性の徴兵について肯定的な考えを持っていることを確認しました。男女平等を追求し、女性の能力が男性に比べて決して劣ってはいないことを皆が認識している現代社会で、男性だけに兵役に服する義務を課すことは非常に後進的で女性を卑下する発想だと思います。女性は保護すべき存在ではなく、国を守ることができる頼もしい戦友になり得ます。したがって、政府には、女性のための徴兵制導入を検討していただくことを願います」
大統領府からの回答
青瓦台のホームページに投稿された請願の賛同者数が20万人を超えると、青瓦台は公式的な立場を表明する必要がある。そこで、青瓦台は6月18日、「女性徴兵制導入の検討要求」に関連する請願について、「女性徴兵制は兵力の補充に限った問題ではなく、様々な争点を含んでおり、国民の共感と社会的合意など十分な議論を経て慎重に決定すべき事案です。また、女性徴兵制が実際に導入されるためには軍の服務環境、男女平等な軍組織文化への改善などに関する総合的な研究と事前準備が十分に行われなければなりません」と立場を示した。
韓国には現在約60万人の軍人がおり、軍人の大部分は徴兵制に依存している。1953年に韓国戦争が休戦してから北朝鮮と対峙している韓国では、男性の兵役義務が憲法で定められ、すべての成人男性は、一定期間軍隊に所属し国防の義務を遂行しなければならない。つまり、韓国の男性は、満18歳で徴兵検査の対象者となり、19歳になる年に兵役判定(軍隊に行くか行かないか、どこで兵役の義務を遂行するか等の判定)検査を受ける。
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