コラム

高年齢層の雇用拡大は新卒採用にどう影響するか?

2020年09月07日(月)15時15分

若年者は高年齢者に比べて体力を要する仕事やパソコンを用いた仕事、そして新しい仕事に優れていることに比べて、高年齢者は豊かな経験や人脈、要領の面で若年者を上回っているので、若年者と高齢者の長所を生かしてお互いを補完する形で雇用が提供されると、高年齢者により若年者の雇用機会が奪われる「置換え効果」の問題が少しは解消されることが期待される。高年齢者と若年者が共に活躍できるように、企業は業務の「補完性」を高めるための施策を講じることが望ましい。

また、高年齢者の雇用推進が若年者の雇用に与える影響は、企業規模や業種、企業の人手不足感、仕事に求められるスキルや能力、雇用延長の形態(再雇用か定年延長なのか)などにより異なる可能性がある。したがって、高齢者の雇用推進が若年者の雇用に与える「代替性」と「補完性」の関係を分析する際には、上記のような企業ごとの特徴を考慮しながら分析を行う必要がある。

本稿は「定年延長等、高年齢者の雇用拡大政策が新卒採用に与える影響」『福利厚生情報』2020年第4号(通巻第197号)を加筆・修正したものである。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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