韓国政府の医師増員計画に専門医がストライキ──医師不足と地域格差の解消法は
韓国はOECD加盟国と比べて主要手術等に対する診療報酬が安く、医療サービスに対する消費者のコストパフォーマンスは高い。その代わりに、医療サービスの供給者に戻る利益は少ない。専攻医協議会は医療従事者に対する人件費を政府が支援し、専門医を増やす必要があると求めている。
また、医師数を決めることは予防医学分野であるので現場の声を反映する必要があるのに、予防医学専門家との議論を行わず、政府が独断的に医科大学の定員を増やしたことを強く批判した。
結びにかえて
2000年にあった医薬分葉を巡る医師会のストライキは4カ月も続いたものの、市民団体がストライキの撤回を訴える声明を続々発表し、各種マスコミの投稿欄には医師会のストライキを非難する投稿が絶えなかった結果、医師会はストライキを撤回し、保健福祉部、医師会、薬剤師会で構成される医薬政委員会に参加した。
但し、今回は専攻医を含めた医師会の反発が強く、2000年より事態が悪化する可能性も高い。さらなる問題はいまだ新型コロナウイルスが収束されておらず、感染が続いていることである。このような時代に両者の対立で国民の不安を煽ることは望ましくない。お互いの主張より現在の国民の健康を守ることが何より重要であることを忘れてはならない。そのためにまず両者が「対話」できる環境を構築する必要がある。
韓国と同様な問題を抱えている日本は、韓国より先に医師不足に対する対策を実施している。2006年には「新医師確保総合対策」を発表し、医師不足が深刻な都道府県(青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重)について各10人の入学定員を増員した。また、2007年には「緊急医師確保対策」を発表し、全都道府県について原則として各5人の入学定員を増やした。さらに、2010年度から2019年度までも、地域の医師確保等の観点から、「地域枠」、「研究医枠」、「歯学部振替枠」という3つの枠組みで増員を行った。その結果、1982年及び1997年の閣議決定により、7,625人まで抑制していた医学部の入学定員は2019年度には9,420人まで増加することになった。
また、厚生労働省は2015年12月に「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)を設けて、2018年11月までに24回にわたり、分科会を開催しながら医師需給や医師偏在の問題について議論してきた。分科会には、日本医師会の役員や大学の教授、マスコミの記者などがメンバーとして参加している。
韓国政府は、韓国より先に医師不足や医師偏在の問題に対する対策を実施した日本の対策を参考としながら今後の対策を検討する必要がある。特に、医療崩壊や国民の不安を最小化するためにどのような対策を行ったのかに注目することが重要であると考えられる。
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