コラム

韓国の若者の本当の失業率は26.8%?

2020年08月14日(金)13時59分

韓国の若者の失業率は統計よりはるかに高い(写真は2011年) Lee Jae-Won-REUTERS

<統計のマジックに騙されず、雇用創出や不安定雇用の解消を急げ>

新型コロナウイルスの感染拡大以降、韓国の雇用状況がじわじわと悪化している。特に、若者の雇用状況が深刻だ。2020年6月の全体失業率は4.3%で、前年同月に比べて0.3ポイント上昇した。特に、15~29歳の若者失業率は同期間に10.4%から10.7%に上昇し、全体失業率を2倍以上も上回った。10.7%という数値は1999年6月の11.3%以降、21年ぶりの高い数値である。さらに、大学を卒業し、兵役の義務を終え、初めて労働市場に参加する若者を中心とした25~29歳の失業率は9.3%から10.2%に0.9ポイントも上昇した。このままだと2020年度の大卒就業率(短大以上)は2019年の67.7%を下回る可能性が高い。

もっとも、韓国の失業率を他のOECD加盟国と比べると、それほど高い水準ではない。例えば、2020年6月時点の韓国の全体失業率と15~24歳の失業率はそれぞれ4.3%と10.8%で、コロンビア、スペイン、ギリシャと大きな差があり、OECD平均8.0%と17.9%も大きく下回っている。韓国における失業率が最も高かった時期は、アジア経済危機以後の1998年と1999年で、当時の失業率はそれぞれ7.0%と6.3%であった。それでも、2020年6月のOECD平均失業率よりも低い水準である。

OECD加盟国の全体失業率(2020年6月基準)
shitugyo zentai.png
注)ギリシャ、トルコは、イギリス2020年4月、ハンガリー、ノルウェー、チリ、メキシコは2020年5月基準
出所)OECD Data:Unemployment rateを利用して筆者作成

OECD加盟国の15~24歳年齢階層の失業率(2020年6月基準)
shitugyo wakamono.png
注)ギリシャ、トルコ、イギリスは2020年4月、ハンガリー、ノルウェー、チリは2020年5月基準
出所)OECD Data:Unemployment rate by age groupを利用して筆者作成

若者失業が統計に出ない理由

実際は若者の多くが失業状態にあるのに、なぜ韓国の失業率は統計上において低い水準を維持しているだろうか?その主な理由としては、1)15歳以上人口に占める非労働力人口の割合が高いこと、2)非正規労働者の割合が高いこと、3)自営業者の割合が高いこと等が挙げられる。

15歳以上人口は、働く意思のある「労働力人口」と、働く意思のない「非労働力人口」に区分することができる。労働力人口とは、労働に適する15歳以上の人口のうち、労働する意思を持つ者で、労働力調査期間である一週間に、収入を伴う仕事に多少でも従事した「就業者」(休業者を含む)と、求職中であった「失業者」の合計を指す。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story