日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(2)マスク対策
もうマスク調達に汲々としなくていい(ソウルの漢江沿いを走るカップル) Heo Ran-REUTERS
<韓国では、足りないマスクを中国に輸出していたことが発覚して「マスク大乱」が起きた。今も不足は解消されていないが、国民の不満は解消された。一体なぜなのか>
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスクの品薄状態が続いている。日本では、1月に初めての感染者が確認されてからマスクの需要が急増し始めた。ドラックストアの前には毎日開店前から並んでも、早々に売り切れてしまう。そこで安倍首相は4月1日、マスク不足問題を解決する対策として「全世帯に布マスク2枚を配布する」と表明した。しかしながら、世間の反応は冷たく、より実効性のある対策が要求されている。
マスク不足は日本だけの問題ではない。新型コロナウイルスの感染が拡大すると、平素はマスクを着用しないアメリカやヨーロッパでもマスクを着用する人が増えはじめるなど、全世界的にマスクに対する需要は急増している。2月中旬に感染がピークであった韓国でもマスク不足が深刻であった。特に、医療現場のマスク不足が懸念された。韓国政府は1月30日時点で1日平均659万枚であった韓国国内のマスク生産量を増やすために2月12日に「緊急需給調整措置」を行った。その結果、マスクを生産する企業数は2月3日以前の123カ所から3月1日には140カ所まで増え、1日平均約1,000万枚のマスクが韓国国内で生産されることになった。しかし生産量が増えたにもかかわらず、マスクの品薄状態は続き、韓国は「マスク大乱」の危機に瀕した。需要が急増したこともその要因ではあるが、生産されたマスクの約90%が公式・非公式ルートにより中国に搬出されていたからである。韓国政府は、この大スキャンダルからいかにして立ち直ったのか。
全員が週に2枚、不正なし
マスクが買えないことに対する国民の不満が爆発寸前に至ると、韓国政府は2月26日から保健用マスクの輸出を制限したことに加え、3月6日からは保健用マスクの海外輸出を原則的に禁止する措置を実施した。さらに、3月9日からは国民1人あたりのマスク購入量を1週間に2枚まで制限した(平日5日のうちマスクを買える曜日が一人一人決まっているため「マスク5部制」と呼ばれる)。決まった曜日にマスクを買いに行くと、薬局は重複購入を防ぐために購入履歴をオンラインシステムに記録する。療養施設や病院の入院患者の場合は病院などの関係者が、高校生までは親が、代理でマスクを購買することも可能である。
韓国政府は個人のマスク購入制限を実現するために「住民登録番号」と「医薬品安全使用サービス(DUR)システム」を応用した療養期間業務ポータル「マスク重複購買確認システム」を活用した。
「住民登録番号」とは、朴正熙政権時代に北朝鮮からのスパイを選び出す目的で作られ、13桁の番号で構成される個人を識別するための番号である。出生の届けと同時に個人番号が与えられ、満17歳になると個人のIDカードとも言える「住民登録証」が発給される。韓国では運転免許証と同時に個人の身分を証明する際に使われる。今回もマスクを購入する際に、本人確認用として使われた。
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