コラム

韓国、新型肺炎の集団感染を起こした新興宗教「新天地イエス教会」の正体

2020年02月25日(火)13時29分

李萬煕は1931年に慶尚北道の清道郡で生まれ、1957年から、自らが神であることを主張した朴泰善(バク・テソン)が設立した「天父敎(信仰村)」に入信し、その後、柳在烈(ユ・ジェヨル)を頂点とした新興宗教「幕屋聖殿」に参加してから、1980年に同僚ホン・ゾンピョと一緒に「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」を創立した。

当時、李萬煕とホン・ゾンピョは、ヨハネの黙示録の11章に出る「二人の証人」が自分たちであると主張して人々を惑わした。その後、ホン・ゾンピョと別れた李萬煕は、本人を「キリストの再臨主」であると自称しながら布教活動を続けて、現在は京畿道果川市の本部を含め、国内には12の支部を設けて運営している。さらに、アメリカ、中国、日本等の海外にも宣教センターを設けており、新天地側は信者数が23万人に達すると主張している。

「新天地」の何が問題なのか?

しかしながら、韓国のキリスト教団体は「新天地」を韓国の教会に最も被害を与えている「異端」として判定している。実際に、「新天地」は聖書を歪曲し、噓をつくことに対して何の罪悪感を持たず、正統の教会に浸透することを教理として正当化している。また、既成教会の信者を奪っていくことや既成教会を乗っ取ることを堂々と行っている。

何より韓国のキリスト教団体が「新天地」が異端であると判定した理由は、聖書を歪曲して伝えているからである。「新天地」の教祖である李萬煕は、自らを「キリストの再臨主」、「救世主」と主張し、14万4千人(12の支部×12,000人)の信者を獲得すると新天地(天国)が開き、「新天地」の信者だけが救われ、永遠の命が得られると教えている。つまり、「李萬煕が伝える神様の御言葉を信じ、『新天地』に入らないと救われない」、「神様の楽園にある命の木は李萬煕であり、彼を通らないと永遠の命が得られない」と李萬煕を神格化している。「新天地」は礼拝に使うために作った讃美歌43番「清い水とまっすぐな道」の繰り返し部分には「本日生まれた萬煕王」という歌詞まで使い、物議をもたらした。また、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」を真似し、イエス様と弟子たちの代わりに李萬煕と12支部の支部長を入れた写真まで作成している。さらに、李萬煕は自らが白馬に乗った写真を取るなど、まるで自分がイエス様であるように行動し、その写真を載せたクリスマスカードまで作成・販売している。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story