韓国は新型肺炎を機に中国依存を脱却すべきだ
影響を受けるのは製造業だけではない。1月末に一部の中国路線の運休と減便を決めている大韓航空は、今年3月の中国路線の運航を67%減らすと発表した。また、アジアナ航空も中国に就航している26路線のうち、6路線の運航を完全に中断することを決めた。中国政府が海外への団体旅行を禁止していることや、新型肺炎の影響を受け、中国への観光客などが急減し、回復までには時間がかかると予想したからである。
対中と対米に大きな差
韓国の民間シンクタンクである「現代経済研究院」は、1月末に過去SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)が発生した時の事例に基づいて、新型肺炎が韓国経済に与える影響に関する推計結果を発表した。報告書では、新型肺炎の感染が中国国内に限定される場合、2020年1~4月の韓国への外国人観光客数は61.6万人、観光収入は0.9兆ウォン減少すると予想した。
しかし実際には感染は韓国国内まで拡大した。報告書はこの場合、同期間の外国人観光客数は最大202.1万人、観光収入は2.9兆ウォンまで減少し、韓国経済により大きな打撃を与えると予想した。また、消費支出は最大0.4%ポイント減少し、2020年第1四半期の経済成長率は対前年同期比0.6~0.7%ポイント(年間では対前年比最大0.2%ポイント)低下すると推計した。
2019年、韓国の製造業の平均稼働率は72.9%(暫定)で、2018年の73.5%に比べて0.6%ポイント低下した。これはアジア経済危機直後の1998年の67.6%以降最も低い数値である。他の要因もあるものの、米中貿易戦争の長期化の影響が大きい。前述した通り韓国経済の中国依存度はまだ高い。2019年基準で輸出額の25.1%、輸入額の21.3%を中国が占めており、2位のアメリカ(輸出13.5%、輸入12.3%)と大きな差が出ている。
図表1 製造業の平均稼働率の推移
出所)統計庁「鉱業・製造業動向調査」
図表2 韓国における10大輸出国のシェア
出所)産業通商資源部・関税庁・韓国貿易協会「韓国の10大貿易国」
図表3 韓国における10大輸入国のシェア
出所)産業通商資源部・関税庁・韓国貿易協会「韓国の10大貿易国」
今後の課題
サプライチェーンが一国に偏りすぎると、何か問題が発生した際のリスクが大きい。米中貿易戦争の長期化や中国を中心に感染が拡大している新型肺炎が良い例である。従って、今後韓国政府はリスクを分散し、生産活動への負の影響を最小化するために、中国に偏っているサプライチェーンをより多くの国へ分散する必要がある。また、中国に進出している企業が韓国に戻り、企業活動が再開できるようにビジネスフレンドリー政策を推進すべきである。新型肺炎が、韓国政府の経済政策を転換させる良い機会になることを願うところである。
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