文在寅は「反日」「親北」なのか
対北朝鮮路線についても同様のことが言える。最近では、文政権に対して韓国の保守層の使う「従北(北朝鮮に従う)」という単語を、日本のメディアでも目にすることがある。
文在寅は北朝鮮との対話に意欲を見せており、そのため「北朝鮮を利する政権」とされているようだ。特に16年2月に操業が中断された、南北が共同運営する開城工業団地の再開について前向きであることに対する批判が大きい。そこで北朝鮮が得られた利益が、核やミサイル開発に利用されるのではないかという憂慮がある。
開城工業団地について注視すべき問題
しかし、北朝鮮は開城工業団地の操業が停止されても、それどころか国際社会から経済制裁を受けても、軍事開発を止めていない。むしろこの数年、核実験・ミサイル発射の回数は増えている。
北朝鮮の軍事開発が「制裁」というカード一枚で、解決できるような単純な問題でないことは明らかだ。
実際、米国もあらゆるカードを使い分けている。最近でも、米国のトランプ大統領は4月末に米韓軍事合同演習を終えた直後の5月2日に、環境が整えば「金正恩と対話する用意がある」とした。中国が部分的な経済制裁を発動しても、北朝鮮は東南アジアなどを経由しながら、外貨を手に入れ、独自のビジネスルートを築いてきた。こういった網の穴があることを熟知しているため、中国は常に経済制裁に慎重な姿勢を見せている。
また実のところ、韓国歴代政権の対北支援金は金大中13億4500万ドル、盧武鉉14億1000万ドル、李明博16億800万ドル(韓国統一部)で、保守政権と進歩政権を比べても大きな差がない。
開城工業団地については、もう一点注視すべき問題がある。
開城工業団地の工場は韓国の企業が運営し、そこに北朝鮮のスタッフが雇用されている。そのため操業停止による韓国企業側の損害は大きく、今年2月の段階で損失額は2500億ウォン(約250億円)とされ、合計でおよそ1000人の韓国人従業員が退職に追い込まれた。それら企業のほとんどが中小企業だ。
北朝鮮から外にでる機会のない人々が、開城工業団地の中で、韓国企業のスタッフとの接触や韓国製品を通じて、北朝鮮以外の世界に触れていたのも現実だ。人と物が動くことによって、北朝鮮に「外の風」が吹くことは、プラスの面が大きいのではないかと思う。
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